研究課題
本研究では、生理的環境下のままサルコメア内のミオシン状態を計測することの重要性を示し、それを具体的に計測するための方法としてラマン分光法を用いた新たな方法を提案した。この当初の計画に関しては、30 fpsの計測分解能で200~4000 cm-1のラマンシフトの同時計測が出来るリアルタイムラマン分光顕微鏡の構築に成功し、TEOS(Tetraethyl orthosilicate)のガラス形成反応などのダイナミクス計測に成功した。この計測系で様々な反応の分子結合変化の計測に成功したが、現時点では、動くサルコメア内のミオシン状態変化の推定までは至らなかった。しかし、当初の想定を超えた成果として、心筋細胞内のサルコメアは、体温の熱を利用して、カオス的不安定性と恒常性的安定性を併せ持った収縮リズムを生み出していることを発見した。心筋細胞内のサルコメアダイナミクスが、ミオシン分子等の1分子計測で確認されているnm スケールの確率的な不安定性だけでなく、μmスケールのカオス的不安定性も生み出して活用し、巧妙なダイナミクスを実現していることを実験事実として発見できた。すなわち、ミオシン分子等を単離してその詳細を調べるだけでなく、生理的環境下のままサルコメア内で振る舞うミオシン等生体分子の挙動とその効果を示すことの重要性を示すことに成功した。この発見を支援するために見出したAIL(AI to learn;学習や研究の裏方に徹した支援ツールとしてAIを活用する)というAI活用指針も今後ますます重要になっていくと確信している。また、溶液に浸かった摘出心臓等の動く試料の構造と「動き」を走査型電子顕微鏡でリアルタイムに計測できる、DET膜法(電子顕微鏡ライブイメージング法)を開発・論文公開・特許取得できたことも大きな成果と認識している。この方法もサルコメア内のミオシン分子動態の直接計測を実現しうる。
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Annual report of Research Institute of Life and Health Sciences
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