研究実績の概要 |
分子内部での電荷は分子物性を特徴づける重要な構造パラメータであり, 特にタンパク質においてはその機能に密接に関係する. 本研究ではクライオ電子顕微鏡を使用した電子回折構造解析を実施し, タンパク質分子中での電荷分布を実験的に決定する手法を開発する. 本研究の遂行には, 電荷決定に求められる測定データ条件の見積もり, 電子回折測定実験およびその効率化のためのシステム構築, 条件を満たす回折データを与える試料の調製および選定, 収集したデータに基づくタンパク質電荷分布モデルの構築 が必要となる. 令和3年度においては, 電子線構造解析による座標決定精度を補完する手法として放射光X線自由電子レーザーを利用した微結晶構造解析, および電子線/X線から得られる情報の統合と比較を実施した. これらは分子構造を決定する手法選択のための重要な指針を示すとともに, 両手法を用いることで水素原子や原子電荷を含めたより詳細な構造情報が抽出できることを示す重要な取り組みである. 同じサンプルを用いた定量的な比較は先行例がなく, 本研究が初の例を示すことになる. この開発には高い精度が要求されるためタンパク質分子ではなく, 生体物質の機能解析に用いられる蛍光分子を利用したが, タンパク質等生体高分子への適用に向けた拡張を続けている. この成果は論文にまとめるとともに[1], 放射光施設SPring-8の利用者向けミーティングで発表した. [1] Takaba, K., Maki-Yonekura, S. et al. ChemRxiv 2021. 査読付き学術誌に投稿済, 現在査読中.
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