研究課題/領域番号 |
20K15766
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
篠原 雄太 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 特任講師 (10755193)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 概日時計 / 多重リン酸化 / 脱リン酸化 / casein kinase 1 / クリプトクロム / 温度補償性 / タンパク質間相互作用 / 転写活性 |
研究実績の概要 |
本研究は概日時計の周期を決定しているCKIδの脱リン酸化活性に着目し、多段階なリン酸化が1日24時間の正確性を示す分子メカニズムの解明を目的としている。時計タンパク質由来のペプチドライブラリーからCKIδの脱リン酸化基質をセレクション可能な評価系を構築し、脱リン酸化活性を促進させるペプチドを発見した。さらにCKIδの脱リン酸化活性部位を結晶構造を基にリン酸化認識部位を推測して、点変異体を導入して、CKIδの脱リン酸化活性部位を同定しており、CKIδの脱リン酸化機構の分子レベルでの理解は、予定通りに順調に進捗している。 またCKIδの脱リン酸化機構の解明をしていく過程で、CKIδと相互作用をする時計タンパク質CRYに新たな転写活性の根底にある新しいメカニズムを見出した。CRYの転写活性は概日リズムの多段階なリン酸化に関与している可能性が示唆している。さらに転写活性を理解するためにCRYの分子動力学シミュレーションを実施して、CRYの構造変化から転写活性機構を分子レベルで明らかとした。 時計タンパク質のノックアウトマウスにアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを用いて、レスキュー系を構築した。昨年度までレスキュー効率が70%程度であったが、AAV濃度の最適化をすることでCRY1の野生型で90%まで向上させることに成功した。さらにin vitroにおいてCRY1の転写活性が弱い変異体でも本研究で構築したレスキュー系により表現型が表れている。in vitroでの活性変化とレスキュー系での表現型の相関性により、本研究で見出した新しい転写活性機構を実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
CKIδの脱リン酸化活性を示す基質の探索は予定通り行っている。またCKIδの脱リン酸化活性部位もCKIδに点変異を導入して活性の評価が終了し活性部位が明らかになってきた。 一方で、CKIδの機能探索の結果から、新たな時計タンパク質CRYの転写活性に新たなメカニズムが明らかになってきた。このCRY1/2による活性の正確性やMDシミュレーションを実施することでメカニズムの理解に時間がかかってしまった。CRYの分子レベルでの理解が進んだため、今後は概日リズムとの関連性をin vivoで確認を行っていく。
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今後の研究の推進方策 |
【1.CKIδの脱リン酸化基質領域の探索】初年度に完了した。 【2.CKIδの脱リン酸化活性部位の探索】点変異スクリーニングにより、CKIδの脱リン酸化活性部位を発見した。今後はAAVベクターを用いてマウスの表現型を 評価していく。 【3.概日リズムにおける脱リン酸化反応の意義】CKIδの脱リン酸化機能探索を行った過程で別の時計タンパク質にも脱リン酸化機能があることを発見した。今後はどの時計タンパク質が概日リズムに核心的に影響を及ぼし、生理学的な機能を個体レベルで表現されるかを評価していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
一部のマルチプレートなどの実験消耗品が新型コロナウイルスの影響を受けて、全国的に納期未定になる遅れが生じた。このため、予定していた発注を取りやめたため、当該助成金の使用額に差が生じた。また酵素反応を測定しているEZリーダーのチップが材料不足で、納期が大幅に遅れたため発注を取りやめしたが、次年度より材料供給が復活してチップの購入が可能となった。繰り越しした予算をチップ購入に使用する計画をしている。
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