あらゆる生物にとってゲノムを安定的に維持することは重要である。植物のゲノムDNAは常に外的・内的要因による損傷の危険に曝されている。外的要因として、紫外線や放射線、土壌中に含まれるアルミニウムやホウ素、病原菌感染など、内的要因として、DNA複製エラー、紫外線や光合成過程で産生される活性酸素の蓄積などが知られている。したがって、ゲノムの傷を治すDNA修復マシナリーだけでなく、そもそも傷が入らないようにゲノムを守る仕組みも非常に重要であると考えられるが、その実体は全く解明されていない。本研究では「植物ホルモンの一種であるオーキシンがクロマチン構造を制御することによりゲノム恒常性を維持する」という仮説を立て、その検証を行うことにより、ホルモンによるゲノム安定性制御という新たな概念を提示することを目標とする。本年度は初年度に見出したヒストン修飾因子がオーキシンによりどのような制御を受けるのかを検証するべく解析を進めた。その結果、ヒストン修飾因子をコードする遺伝子の転写レベルは外的なオーキシンには応答しないことが明らかになった。一方で、外的なオーキシンの処理によって、ヒストン修飾因子のタンパク質の安定性が増すことを示すデータが得られた。また、このヒストン修飾因子の安定性の制御に関わる候補タンパク質を同定し、その関係性についての解析を行いヒストン修飾因子の安定性が候補タンパク質により制御されていることを明らかにした。
|