研究課題/領域番号 |
20K15772
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大屋 恵梨子 東京大学, 定量生命科学研究所, 助教 (60847721)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ヘテロクロマチン / 遺伝子 / 発現制御 / エピジェネティクス / 分裂酵母 |
研究実績の概要 |
基本的に同じDNA情報を持つ約270種類のヒトの細胞では、各細胞での固有の性質を持つ様、クロマチンの後天的な化学修飾による「エピジェネティック」な発現制御により、DNA配列の変化を伴わずに遺伝子の発現を調節している。この発現調節に異常が生じると、個体の発生異常や、がん・生活習慣病などの疾患を引き起こす。本研究では、エピジェネティックな制御機構のうち、遺伝子の発現をOFFにするメカニズムに着目し、申請者が近年の研究で見出した新規エピジェネティック修飾であるヒストンH3の14番目のユビキチン化修飾について、細胞周期を通した修飾の動態・局在を明らかにし、脱ユビキチン化酵素などその動態制御に関わる因子の特定・機能解明する事を目的とする。当該年度は、以下の課題を中心に研究を実施した。
【脱ユビキチン化酵素の同定】ヒストンH3K14ユビキチン化修飾が細胞周期依存的な一過性の修飾である場合、特定の脱ユビキチン化酵素によって脱ユビキチン化修飾を受けている可能性が高い。よって、その可能性を検証する為、当該年度は、脱ユビキチン化酵素の高次クロマチンへの影響を検証した。遺伝学的なアプローチにより、分裂酵母の既知の20個程の脱ユビキチン化酵素をコードする遺伝子を欠損させ、高次クロマチンに異常を生じるか調査した。その結果、いくつかの脱ユビキチン化酵素をコードする遺伝子を欠損させた細胞では、既知の高次クロマチン制御因子と同様に、サイレンシング異常が観察された。よって、脱ユビキチン化酵素の高次クロマチン形成への関与が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度では、遺伝学的なアプローチにより、高次クロマチンにおける脱ユビキチン化に関与するいくつかの候補因子を同定することが出来た。よって、次年度は、得られた候補因子の機能解析を進め、ヒストンH3K14ユビキチン化を中心とした高次クロマチン制御機構の解明に繋がる事が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
脱ユビキチン化酵素の機能解析を行う。通常、脱ユビキチン化酵素は他のタンパク質と複合体を形成することが多く、またヒストンH3K14ユビキチン化修飾酵素を含むCLRC複合体と相互作用する可能性が高い。よって、その可能性を検証する為、生化学的解析により、同定した脱ユビキチン化酵素と相互作用する因子の同定を試みる。さらに、遺伝学的・生物学的、および細胞生物学的アプローチにより、脱ユビキチン化酵素の機能解析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響により、情報収集や成果発表の為に参加予定であった学会がオンラインでの開催となり、計上していた学会参加の為の予算を使用せず、次年度使用額が生じた。この為、2021年度は積極的に学会に参加して情報収集及び成果発表を行う事とし、次年度使用額はその費用に充てる。
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