研究実績の概要 |
CRISPR/Cas9によるゲノム編集技術の革新的進歩によって多種多様なゲノム編集生物が迅速かつ簡便に作出され、生命医科学研究に利用されている. しかし, ゲノム編集生物の作出効率について再現性が得られない事例や, ゲノム編集によって想定外の大型塩基欠失を引き起こす現象が近年相次いで報告されており, ゲノム編集生物を用いた研究の根幹に関わる重大な問題となっている. そこで本研究課題は汎用的なゲノム編集デザインに対応した全アレル変異を同定する新規遺伝型解析技術の開発に取り組んだ. 本年度はナノポアロングリードシークエンサーと機械学習モデルを組み合わせたDAJIN(Determine Allele mutations and Judge Intended genotype by Nanopore sequencer)という遺伝型解析ソフトウェアを開発した. 実際にゲノム編集マウスに対してDAJINを用いた結果, 目的のゲノム編集結果(点変異, 欠失, 逆位, ノックイン)をもつサンプルを同定することにとどまらず, 想定できない異常な変異を1塩基単位の精度で自動的に同定することができた. とくに点変異については従来の遺伝型解析手法では困難であった, 「点変異かつ異常な塩基欠損が生じた変異アレル」の判別が可能であった. また, DAJINは1日に約100サンプル(異なる編集条件のファウンダーマウス100匹など)を扱うことができるため, 大規模な遺伝型解析にも対応可能であった.
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