研究課題
苔類ゼニゴケは近年、発生進化生物学においてモデル植物としての利用が広まっている。 本研究では、より正確かつ充実したゼニゴケ参照ゲノムおよびその遺伝子アノテーション情報を研究コミュニティに提供するためゼニゴケゲノムデータベース (MarpolBase, https://marchantia.info) の開発を行っている。また、その主要機能の一部を切り出しコンテナ仮想化技術等を応用することで、コンピュータのプラットフォームや実行環境によらず汎用的なゲノムデータベースを簡便に構築できる「高可搬型ゲノムデータベース」の開発を行う。令和2年度は、雄標準系統の参照ゲノムアノテーションの更新と雌標準系統の参照ゲノム配列の解読を進め新たに公開を行った。新規に決定された雌性染色体配列情報を用いた論文の準備が進められており、共著者として参画予定である。発現量データベースの開発は京都大学との共同研究により進められており、これまでに開発中のデータベースを国内の研究者向けに限定公開を行っている。また、データベースの機能の一部を利用することでイエネコゲノムデータベース (Cats’ I, https://cat.annotation.jp) を構築し公開を行った。イエネコゲノム解析に関しては、研究代表者はゲノムデータベースの開発を担当しており、現在までにbioRxivでプレプリントが公開され、今後、査読付き論文誌への投稿が予定されている。
2: おおむね順調に進展している
令和2年度では新たに雄の標準系統 Tak-1 ゲノムのアノテーション更新版 (MpTak1_v5.1r2) のデータを公開した。また、雌標準系統 Tak-2 ゲノムの新規決定を行った。さらに、Tak-1の常染色体配列および雌雄の性染色体配列を合わせた標準ゲノムを構築し公開した。この他、Tak-1/Tak-2とは異なるゼニゴケ の亜種 (subsp. marchantiaおよびmontivagans) のゲノムアノテーション情報を取り込み、新規に公開を行なった。発現量データベースは京都大学の川村昇吾氏を中心に開発が進められており、これまでに主に国内の研究者や共同研究者を対象に試作段階のデータベースを公開している。現在、前述の標準ゲノムを使ったデータ作成や機能の追加が進められている。また、データベースの仮想コンテナ化を行い、開発環境や運用環境構築の迅速化をはかった。また、これを利用することでイエネコゲノムデータベース (Cats’ I, https://cat.annotation.jp) を構築し公開を行った。
令和2年度に公開したゼニゴケ標準ゲノムは、雌雄の区別を必要としない解析における参照ゲノム配列として今後の利用が広がることが期待される。そのため、標準ゲノムのアノテーション情報の拡充化を引き続き進めていく。また、発現データベースについては機能強化をはかるとともにゼニゴケデータベース本体との統合化を進めて、論文化を目指す。また、研究代表者がゲノムデータベース開発を担当したイエネコゲノム解析に関しては、査読付き論文誌への投稿準備が進められている。
新型コロナウィルスの流行により参加予定だった学会が中止あるいはオンライン開催に変更になったため、予定していた交通費が不要となった。次年度ではサーバーの増強費およびソフトウェアの開発費に用いる。
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