研究課題
本研究では、次世代モデル生物として注目を集めるゼニゴケ Marchantia polymorphaの正確かつ充実したゲノム情報を研究コミュニティに提供するためのゲノムデータベースMarpolBase (https://marchantia.info) の開発を行っている。また、その主要機能の一部をベースとしコンテナ仮想化技術等を応用することで、様々な生物のゲノムデータベースを簡便に構築できるプラットフォームの開発を行っている。令和5年度では、PacBio HiFi Sequencingを用いて取得した高精度リード配列をアセンブルすることで、雌雄の標準株Tak-1株およびTak-2株のゲノム配列を構築した。新たに決定されたゲノム配列は、雌雄のそれぞれ1ヶ所に塩基配列を決定できなかったギャップ領域を含んでいるが、性染色体を含むすべての染色体について染色体末端にテロメアまたはrDNAクラスタが確認できたことからほぼ完全長のゲノム配列を決定することができた。ゲノム配列に対し遺伝子注釈情報を付与し、参照ゲノム配列ver. 7.1としてMarpolBaseから公開を行った他、DDBJを通して国際塩基配列データベースにも登録を行なっている。ゲノム配列の構築に関しては、台湾・日本の合同国際シンポジウム (TJPB2023, 10月) および同時に開催されたゼニゴケワークショップにおいてそれぞれポスター・口頭発表を行なった。また、フランスの研究グループによるパンゲノム解析に協力し、解析に用いたゼニゴケ約130系統の変異情報を可視化するためのゲノムブラウザおよびデータダウンロードサイトをMarpolBase内に設置した。パンゲノム解析に関しては現在論文が査読中となっている。
3: やや遅れている
令和5年度においてはPacBio HiFi Sequencingを用いた高精度参照ゲノム配列の構築とそのデータ公開を行なった。これは当初の研究計画には含まれていなかったが、塩基解読費用の低廉化により可能となったものである。そのため、1年間の研究機関の延長を申請した。
令和4年度に公開されたゼニゴケ発現量データベースMarpolBase Expression (MBEX, https://marchantia.info/mbex/) について新参照ゲノム配列を用いてデータの再解析を行い、その完了を待って参照ゲノム配列およびデータベースに関する論文を投稿する予定である。
新型コロナウィルスの流行により予定していた国際会議への参加ができなかったため残額が生じた。次年度、論文投稿費用あるいは学会参加費として使用する予定である。
すべて 2023 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件)
https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2023.10.27.564390v1.full.pdf+html