研究課題
若手研究
細胞の中には,小胞体やミトコンドリアなど,生体膜で囲まれた様々な機能をもつオルガネラが存在します。生体膜の主成分である脂質の組成はオルガネラによって異なり,厳密に恒常性が維持されていますが,脂質がどのように合成され,適切な場所に分配,輸送されるのかについては未解明な部分が多く残されています。本研究では,ヒトの神経変性疾患原因遺伝子の酵母オルソログ(相同な機能をもった遺伝子)が,ミトコンドリア内で合成されるリン脂質の合成や輸送,量の調節に関与している可能性を示しました。
細胞生物学,生化学
本研究では,ヒトの神経変性疾患原因遺伝子の酵母オルソログに疾患関連変異を導入すると,ミトコンドリア内リン脂質の異常に加えて,ミトコンドリア形態の異常,呼吸活性低下などが引き起こされ,ミトコンドリア機能不全に陥ることが明らかとなりました。神経変性疾患は,いまだに明確な発症メカニズムは分かっておらず根本的な治療薬も存在しませんが,本研究成果より,分子病態メカニズムの解明や創薬につながる可能性があり,学術的意義,社会的意義は大きいと考えます。