ES細胞からの生殖細胞の試験管内誘導系を用いて転写因子ZGLP1を同定した論文を発表した。また、ZGLP1により転写が活性化され卵形成のごく初期に発現を開始し、卵の機能獲得に寄与すると考えられる新規の転写因子群を多く同定した。令和2年度は所属研究室を転属し、新たな研究室での卵母細胞試験管内誘導系の確立、新たに同定してきた転写因子群のin vivoの卵形成過程における発現動態解析、そして、ゲノム編集を用いた新たな遺伝子改変ES細胞株の樹立を行った。同定してきた転写因子群は、(1)胎生期の卵母細胞のみで一過性に発現のある因子群、(2)胎生期以降、成体においても発現が維持または発現が上昇される因子群の2つに大別さることができ、胎生期減数分裂の遂行、そして、成体における卵母細胞成長・成熟期にて機能することが予想された。これはZGLP1によって卵機能を構築する複数の機能モジュール(減数分裂期相同組み換え形成、細胞質成熟)が制御されていることを示唆している。本年度はこれら新規転写因子群の欠損ES細胞株の作出を行った。各遺伝子あたり複数の遺伝子欠損ES細胞株を樹立し、現在、それら細胞株の基礎特性の解析を行っている。
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