研究課題
本研究の目的は、マウス初期胚の全能性期に一過性に発現する反復多コピー遺伝子の一つ、Gm21312の機能解析を行い、初期胚の全能性制御機序を明らかにすることである。Gm21312タンパク質のアミノ酸配列はAlyrefと相同性が高い事から、この遺伝子をRNA and Export Factor in Early Embryos, Refeeと名付けた。まず、Refeeに対するiCLIP-seqを行った結果、RefeeはRNA結合タンパク質であることがわかった。さらに、Refeeは マウス内在性レトロウイルスL(MERVL)のRNAに主要に結合していることが明らかとなった。iCLIP-seqで得られたRefee結合RNA配列の多くは、m6A修飾部位である事がわかった。in vivoにおけるRefeeの機能インパクトを検討するため、マウス受精卵にRefeeに対するアンチセンスオリゴを注入し、Refeeノックダウン(KD)胚を作製した。この結果、Refee KD胚は2細胞期~4細胞期胚で発生停止してしまう結果となった。この胚のRNA-seqを行った結果、Refee KD胚は2細胞期後期で起こる、胚性ゲノムの転写活性化(ZGA)が開始しない事がわかった。また、Refee KD胚におけるMERVL RNAの挙動をRNA FISH法で調べた結果、コントロールKD 胚と比べMERVL RNAの発現レベルが減少している他、MERVL RNAが核内に停滞している傾向が認められた。以上、RefeeはMERVL RNAの核外輸送や安定性を促進していることがわかった。哺乳類の全能性期胚では父方と母方のゲノムが融合して新たなゲノム(胚性ゲノム)が構築される場である。RefeeはRNAの安定性や核外輸送を促進することで、できたての胚性ゲノムを正常に機能させる役割があることが明らかとなった。
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