研究課題/領域番号 |
20K15809
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研究機関 | 基礎生物学研究所 |
研究代表者 |
篠塚 琢磨 基礎生物学研究所, 分子発生学研究部門, 特任助教 (70869023)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | Wnt / roof plate / 細胞骨格 / 形態形成 |
研究実績の概要 |
本研究ではWntシグナルによる細胞の形態形成の制御機構を明らかにすることを目的とし、マウス発生期の神経管におけるroof plate細胞の形態変化に注目している。現在、roof plate細胞の形態変化の過程を「頂端面の収縮」と「頂端-基底軸方向への伸長」という2つの段階に分離して研究を進めている。Roof plate細胞の頂端面の収縮メカニズムの解明に向けた研究に関しては、まずroof plate細胞の形態変化の経時的な観察を行い、roof plate細胞の頂端面が収縮する時期特異的にroof plate細胞でミオシンがリン酸化されることを見出した。さらに、細胞外へのWntの分泌に必須の因子であるWntlessをroof plate細胞特異的にノックアウトしたマウス(Wls cKO)の解析からroof plate細胞の頂端面ではWntシグナル依存的にミオシンのリン酸化が引き起こされることが示唆された。一方、roof plate細胞の頂端-基底軸方向への伸長メカニズムの解明に向けた研究に関しては、まず伸長したroof plate細胞における細胞骨格の空間分布の解析を行い、伸長したroof plateの細胞突起においてアクチン繊維が頂端-基底軸に沿って配向していることを見出した。さらに、Wntシグナルによるアクチン細胞骨格の制御機構を明らかにするため、アクチンと細胞膜に結合するERMファミリータンパク質のEzrinとRadixinに着目し、二重変異マウスを作成し解析を行った。これらの変異マウスにおいてはWls cKOマウスと同様にroof plateの伸長が阻害されたことからERMファミリーがroof plateの伸長に関わることを見出した。このように、roof plateの細胞伸長に関わるアクトミオシン細胞骨格に関連する因子を同定することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Roof plate細胞の頂端面の収縮メカニズムの解明に向けた研究に関しては研究計画通りに進捗しており、Wntシグナル依存的にroof plate細胞においてミオシンリン酸化が引き起こされることを見出した。Roof plate細胞の頂端-基底軸方向への伸長メカニズムの解明に向けた研究に関しては、Ezrinノックアウトマウスの解析を計画を前倒しして行い、Ezrinを含むERMファミリーがroof plate細胞の伸長に関与することを見出した。一方で伸長したroof plate細胞にかかる力の解析および電子顕微鏡によるroof plate微細構造の解析は計画を変更して次年度に行う。このように研究全体としてはおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
Roof plate細胞の頂端面の収縮メカニズムを明らかにするため、Wntシグナルによるミオシンのリン酸化の制御機構の解析を進めていく。また、roof plate細胞の頂端-基底軸方向への伸長メカニズムを明らかにするため、WntシグナルによるEzrin活性化の制御機構についても解析を進めていく。さらに、伸長したroof plate細胞にかかる物理的な力とWntシグナルの関連も解析を行い、細胞の形態形成におけるWntシグナルによる細胞骨格の制御機構の解明を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度に予定していたroof plate細胞にかかる力の解析および電子顕微鏡によるroof plate微細構造の解析を計画を変更して令和3年度に行うため次年度使用額が生じた。次年度使用額を用いてこれらの研究を遂行する。翌年度分として請求した助成金については当初の研究計画に沿って使用する。
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