研究課題
若手研究
多くの生物で葉緑体は母性遺伝する。クラミドモナスでは、接合後に雄葉緑体DNAが選択的に分解される。本研究で、葉緑体DNAの複製は、一葉緑体あたり約80コピー存在する葉緑体DNAの一部のコピーが何度も鋳型となって複製されることを示唆した。この複製様式は、接合子に雄葉緑体DNAが残存した場合でも、雌葉緑体DNAを選択的に複製することで、母性遺伝を保障すると考えられる。また、接合子特異的な相同組換え因子の発現上昇は、次世代に安定的に葉緑体ゲノムを渡すために重要であることを示した。
植物細胞生物学
葉緑体は光合成を行うことで地球上の多くの生命を支えている。葉緑体DNAに外来遺伝子を導入することで多量の有用タンパク質を葉緑体内に蓄積させ、これをワクチンに利用する研究が進んでいる。また葉緑体が母性遺伝するという特徴から、葉緑体DNAに導入した外来遺伝子は花粉などによって野外に拡散されにくいと考えられている。葉緑体DNAの母性遺伝機構を理解すれば、その知見は有用作物の育種技術に応用できると期待される。