研究課題/領域番号 |
20K15813
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
古谷 朋之 神戸大学, 理学研究科, 学術研究員 (10827356)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ゼニゴケ / 有性生殖 / 発生 / 形態形成 / 分子進化 |
研究実績の概要 |
植物は進化の過程で有性生殖システムをダイナッミックに変遷させてきた。近年、陸上植物の基部に位置するタイ類ゼニゴケにおいて生殖成長に関わる研究が著しく進んでいるが、有性生殖に必須の装置である造卵器や造精器といった配偶子器(嚢)の特に初期発生過程は解析が困難で、その分子メカニズムの解明が待たれている。申請者は、ゼニゴケを用いた植物特異的転写因子BZR/BESファミリーの解析から配偶子器形成を誘導することができる転写因子MpBZR3を見出している。このことからMpBZR3が分子スイッチとして機能することで配偶子器を形成する遺伝子発現ネットワークの起点となると考え、本研究ではMpBZR3を中心とした解析により配偶子器形成を誘導する分子メカニズムの解明を目的に研究を進めている。 本年度は、昨年度に引き続きMpBZR3の機能欠損変異体の作出を行ない、雄株だけでなく雌株の取得に成功した。またそれらの変異体の有性生殖器官を詳細に観察し、特に雄株において造精器の発生に異常が見られることを見出した。さらにはRNA-seq解析を実施し、野生型と比較して、造精器および造卵器関連遺伝子群の遺伝子発現がMpbzr3変異体において大きく変化していた。これらの結果はこれまでのMpBZR3過剰発現体を用いてきた解析と合わせてMpBZR3の配偶子器発生における重要性を示唆している。さらにヒメツリガネゴケ、イネ、トマト等から得られたMpBZR3オーソログ遺伝子を用いて機能の比較解析を始め細胞内局在解析、転写活性等を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3つ研究計画の全てにおいて解析が進み、結果も蓄積してきており、論文化に取り掛かっている。一方で、1つ目の計画に含まれるChIP-seq解析は未だ準備段階であるが、Mpbzr3機能欠損変異体の解析が順調に進捗しており、それらを用いたRNA-seq解析結果が増えたことから異なったアプローチでの下流候補遺伝子の同定が期待できる。さらに他の配偶子器形成関連因子であるMpBNBとの遺伝学的な関係性を解析しており、配偶子器発生の分子メカニズムの一端が明らかになってきた。またオーソログ遺伝子の解析も形質転換ゼニゴケの作出等が進行中である.
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今後の研究の推進方策 |
論文化に向け、MpBZR3レポーター株を用いた遺伝子発現解析をより詳細に行ない、MpBZR3の配偶子器発生における役割を明らかにしていく。また蓄積してきたRNA-seq解析データを用いて生物情報学的アプローチから下流候補遺伝子の選抜および分子ネットワークの構築を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
MpBZR3の解析が進展してきたため論文化を進めている。その際に必要性がある解析等を進めるために次年度への延長が必須と考えたため。
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