研究課題/領域番号 |
20K15814
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
都筑 正行 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (40845616)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | マイクロRNA / 花成制御 / SPL / ゼニゴケ / シロイヌナズナ |
研究実績の概要 |
本研究では、陸上植物に保存されたmicroRNA156/529 (miR156/529)とSPL転写因子による成長期移行モジュールに着目し、どのような分子メカニズムによって成長期移行を促進しているのかを明らかにすることを目的としている。これまでの研究により、被子植物シロイヌナズナとコケ植物 ゼニゴケ共通にmiR156/529によるSPL転写因子の発現抑制が正常な成長期移行に重要であることが明らかになったが、生活環や体制の大きく異なる植物種間で分子メカニズムが共通しているかは不明であることから、シロイヌナズナとゼニゴケの2種類の系統的に離れたモデル植物を材料とすることで、疑問の解明に取り組む。 令和2年度は実験に用いる植物体として、シロイヌナズナAtspl3、Atspl9、Atmir156変異体の整備と、ゼニゴケMpSPL2の蛍光タンパク質付き形質転換体の作出、ラインの選抜・確認を行なった。また、SPL転写因子の下流遺伝子を網羅的に同定するためのクロマチン免疫沈降(ChIP)解析に必要なAtSPL9およびMpSPL2のポリクローナル抗体の作製、条件検討を試みた。ゼニゴケ形質転換体の作出に関しては、複数ラインから表現型の相補を基準としてラインの確立を終えた。ウサギを用いて作製したポリクローナル抗体の確認として、変異体植物をコントロールとしたウエスタンブロッティングを行なったが、未精製の抗血清の段階では強いシグナルを持つ抗体を得ることができなかったことから、サンプリング法の検討など、実験条件の検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
植物体の整備に関しては概ね完了しており順調に進んでいる。ゼニゴケMpSPL2の蛍光タンパク質付き形質転換体は、T1ラインの時点で葉状体の形状や生殖器誘導条件に対する応答といった表現型にばらつきが大きく、トランスジーンの挿入位置等による遺伝子発現量のばらつきが考えられる。今後生化学的な実験を行う際に、SPLタンパク質の発現量は大きく影響を与えることが考えられることから、解析に最適なラインの選択には慎重になる必要があると考えている。ChIP解析に必要な抗体の選択・作製に関しては、現時点で完了していない。抗体の確認として行なったウエスタンブロッティングでは、抗血清をそのまま用いたことから、今後抗原ペプチドを用いたカラム精製を行なった後、再度ウエスタンブロッティングによる確認やChIP解析に使用可能かどうかを確認する必要がある。また、SPLタンパク質の発現領域や発現時期を考慮したサンプリング法の改良も必要であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度の結果を踏まえて、令和3年度は以下の計画を元に研究を進める予定である。 まずChIP解析に必要な抗体の選択について、引き続きSPLタンパク質特異的なポリクローナル抗体の確認を行う。抗体作製に抗原ペプチドを用いたカラム精製を行なった後、再度ウエスタンブロッティングおよび実際にChIP解析に使用可能かどうかを確認する。ポリクローナル抗体が使用できない可能性を考えて、シロイヌナズナタグ付き植物体の作出と、すでに作出済みのタグ付きMpSPL2形質転換体を用いて、ゼニゴケにおけるChIP解析の条件検討を行う。具体的には、クロスリンクやChIPの条件検討を、qPCRによるDNAの濃縮の定量によって行う。 またin vivoで行うChIPの遂行が難しい場合を考え、代替となる実験手法を使用した解析にも取り組む。具体的には、in vitro系でのゲノムDNAとSPLタンパク質の結合の検出などを試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルスの影響により予定していた学会発表がオンライン開催になったため、旅費の計上分を使用できなかった。2021年度に学会発表を予定より多くすることで使用する計画である。
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