研究課題
被子植物の精細胞は、伸長する花粉管の中を通って受精の場へと輸送される。これまで積荷として受動的に輸送されると考えられていた精細胞だが、近年の研究から、独自の駆動力によって受精の場へ自ら移動することが間接的に示唆された。しかし精細胞の駆動力に着目した研究はほとんど例が無く、その輸送に関与する分子も不明である。そこで本研究では精細胞が受精の場へと移動するための駆動力をつかさどる分子の発見と、その輸送の分子メカニズムを明らかにすることを目指した。研究最終年度となる令和3年度は、昨年度に作出した変異体二種類を用いた解析を通じて花粉管の未知なる能力と精細胞駆動力についての知見を深める研究を行った。前者、二種類の変異花粉を用いた解析より、花粉管中の3つの細胞核全てが花粉管基部に取り残される花粉管の作出に成功した。そしてこの細胞質に核を持たない変異花粉管は、核を持つ花粉管と同様に伸長する能力を持つこと、更に胚珠の位置を認識して方向転換して、雌組織のもとへ辿り着くことを明らかにした。この成果は英国Natureグループが発行するオンライン科学誌「Nature Communications」誌で報告した。花粉管と精細胞の駆動力についての関連した研究についての包括的な知見をまとめた。そしてこの知見を、日本植物形態学会が発行する科学誌「Plant Morphology」で報告見込みである。また、本研究成果に関連して、日本細胞生物学会より「若手最優秀発表賞」、日本植物形態学会より「平瀬賞」という2つの栄誉ある賞を受賞することができた。
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