研究課題/領域番号 |
20K15832
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研究機関 | 秋田県立大学 |
研究代表者 |
津川 暁 秋田県立大学, システム科学技術学部, 助教 (20607600)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 植物成長 / 重力屈性 / 弾性体力学 / 画像解析 / 数理モデル |
研究実績の概要 |
今年度は,前年度に推進した重力屈性動態の数理モデルを更に発展させ,広範な植物の重力屈性挙動を知るために樹木の枝屈性について研究し,その成果を論文として発表した.今年度の助成金は,研究成果論文の雑誌掲載費と文献購入費に充てた.
1. 樹木屈曲動態に関する論文はScientific Reports誌に掲載された.本論文では,樹木の枝屈性を理解するために,栃木県日光植物園にてケヤキとカラマツの樹形表面点群データを取得した.得られた点群データを解析し,幹の周りの枝の屈曲動態を定量的に評価し,ケヤキとカラマツでは枝の生え方とその後の屈曲挙動に明確な違いがあることを明らかにした.この定量結果を基に,枝の屈曲を表現する数理モデルを構築し,ケヤキとカラマツでは枝の基部を支える応力分布に違いがある可能性を浮き彫りにし,枝を屈曲させることで基部応力を均一化している可能性があることを示した. 2. 上記,樹木の枝屈曲に関する研究を応用し,植物の屈曲を利用した曲がった構造物を提案した.特に,曲がった構造物の提案に関しては,「形態と力学トレードオフ関係」を明らかにした研究成果を建築学会で研究発表するなど植物学に留まらず,建築分野・工学分野・材料力学分野の研究者と共に応用可能性についての議論を進めている. 3. 前年度の研究成果を総説にまとめ,形態学会誌の特集号に掲載された.特に,実験データと数理モデルの対応を「形態空間」と呼ばれる形態学で盛んに研究されている手法の応用例と位置づけ,形態を定量化することの重要性を示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画当初は前半の2年間で画像データ解析によるデータ駆動型研究と1次元弾性体モデルによるモデル駆動型研究を達成する予定であったが、前年度までで両者の方法を確立することができた.本年度は,それらの開発手法を樹木の枝屈曲動態の解明に応用し,広範な植物種の屈曲解明に進めたため.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,本研究成果をさらに発展させ,姿勢制御に関する変異体のデータ解析とモデル解析を進める.当初の問いである「重力屈性の最中に組織の力学がどうなっているか」を解明するために,細胞動態が定量化できる根の重力屈性に焦点を当てる予定である. 後半2年間で予定している,デジタル画像相関法の改良や有限要素法モデルの開発を順次進め,姿勢制御に関する力学問題と光-重力の複合刺激による屈曲過程を解明することを計画している.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症の影響により,国内出張旅費の支出が不可であったため.次年度の国内出張費に使用する.
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