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2023 年度 実施状況報告書

植物重力屈性の力学的仕組みの解明

研究課題

研究課題/領域番号 20K15832
研究機関秋田県立大学

研究代表者

津川 暁  秋田県立大学, システム科学技術学部, 助教 (20607600)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2025-03-31
キーワード植物成長 / 重力屈性 / 弾性体力学 / 画像解析 / 数理モデル
研究実績の概要

今年度は,植物の茎の屈性動態の定量的評価および力学的な安定性の評価を行い,特に数理モデルの開発により姿勢制御機構の解明へ迫る研究成果を論文として発表した.また,植物棒状構造であるイネに関して節間を考慮した力学モデルを開発し,倒伏する際のたわみを評価する手法を開発し論文にまとめた.今年度の助成金は,研究成果論文の掲載料や物理学関連図書の購入に充てた.

1. 植物の姿勢制御の力学的原理に関する論文はScientific Reports誌に掲載された.本論文では,植物がどのように身体を曲げ、そして曲げ過ぎないように姿勢を正しているのかを明らかにするために,野生型と姿勢制御変異体を比較を行った.茎を変形する棒とみなす弾性棒理論を応用し,茎が曲がる過程で、どこにどのような力がかかるのかを定量的に示す方法論の確立に,初めて成功した.この力学モデルから、茎が曲がり過ぎると茎の中間領域で力学的な不均衡を起こし,不安定な姿勢になることがわかった.すなわち,植物が姿勢正しくまっすぐに伸びることは,力学的に有利であることが示された.本研究の成果は,重力屈性の謎を「力学」という新たな視点から展開できる可能性を示している.

2. 農作物であるイネの倒伏耐性に関する論文はScientific Reports誌に掲載された.本論文では,イネなどの穀物が自重や暴風などにで倒伏する被害を低減させるため,これまで確立されていなかった特性の異なる品種間を比較する方法を開発した.材料力学の弾性柱理論を応用し,どのような形あるいは硬さの条件でイネが倒伏するかを定量的に明らかにする力学モデルの構築に初めて成功した.この力学モデルを用いた解析により,穂に最も近い節間の特性が自重で倒れないために重要であることが明らかになった.この研究成果から,力学理論と育種学の融合により,倒伏耐性が向上した新たなイネ品種の作出が期待される.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

計画当初の力学モデル駆動型の方法論が運用でき,モデル植物のシロイヌナズナの茎の屈曲過程のみならず,同様の棒状構造を持つイネなど他植物への応用研究にも波及している.考察の起点となる力学の視点は従来の植物科学では捉えられていなかった姿勢安定性の原理的な側面を浮き彫りにし,植物と物理学を融合させる新たな学術展開を開きつつある.イネのたわみ・倒伏耐性についても,弾性方程式による定量化が起点となり植物育種や品種改良にもつながったことが重要な学術的進展であると考えられる.

今後の研究の推進方策

期間延長申請を希望し,最終年度で本研究成果の総仕上げとして,根の重力屈性を対象としたデータ解析およびモデル解析結果を学術論文として発表することを目指している.

次年度使用額が生じた理由

最終年度研究のための経費であり,研究をまとめる際に使用する文房具等の経費に充てる.

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2023 その他

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (2件) 備考 (4件)

  • [雑誌論文] A mechanical theory of competition between plant root growth and soil pressure reveals a potential mechanism of root penetration2023

    • 著者名/発表者名
      Tomobe Haruka、Tsugawa Satoru、Yoshida Yuki、Arita Tetsuya、Tsai Allen Yi-Lun、Kubo Minoru、Demura Taku、Sawa Shinichiro
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 13 ページ: 7473

    • DOI

      10.1038/s41598-023-34025-x

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Thickness-stiffness trade-off improves lodging resistance in rice2023

    • 著者名/発表者名
      Tsugawa Satoru、Shima Hiroyuki、Ishimoto Yukitaka、Ishikawa Kazuya
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 13 ページ: 10828

    • DOI

      10.1038/s41598-023-37992-3

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Coordinate Normalization of Live-Cell Imaging Data Reveals Growth Dynamics of the <i>Arabidopsis</i> Zygote2023

    • 著者名/発表者名
      Kang Zichen、Matsumoto Hikari、Nonoyama Tomonobu、Nakagawa Sakumi、Ishimoto Yukitaka、Tsugawa Satoru、Ueda Minako
    • 雑誌名

      Plant And Cell Physiology

      巻: 64 ページ: 1279~1288

    • DOI

      10.1093/pcp/pcad020

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Shoot gravitropism and organ straightening cooperate to arrive at a mechanically favorable shape in Arabidopsis2023

    • 著者名/発表者名
      Tsugawa Satoru、Miyake Yuzuki、Okamoto Keishi、Toyota Masatsugu、Yagi Hiroki、Terao Morita Miyo、Hara-Nishimura Ikuko、Demura Taku、Ueda Haruko
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 13 ページ: 11165

    • DOI

      10.1038/s41598-023-38069-x

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 捕虫葉の力学:膜バーテックスモデルの理解と応用2023

    • 著者名/発表者名
      津川暁
    • 学会等名
      非平衡・多階層・複雑系研究会
  • [学会発表] 数理力学モデルを基盤とした植物科学とその融合研究2023

    • 著者名/発表者名
      津川暁
    • 学会等名
      ソフトバイオ研究会
  • [備考] 植物根部の浮き上がり現象の力学的仕組みを解明

    • URL

      https://www.akita-pu.ac.jp/kenkyuseika/kenkyuseika2023/7867

  • [備考] イネが自重で倒れないためには穂に最も近い節間の特性が重要であることを発見

    • URL

      https://www.akita-pu.ac.jp/kenkyuseika/kenkyuseika2023/7938

  • [備考] 植物の曲がり過ぎない姿勢に学ぶ力学原理

    • URL

      https://www.akita-pu.ac.jp/kenkyuseika/kenkyuseika2023/7961

  • [備考] 植物の受精卵が形を変えながら伸びることを発見

    • URL

      https://www.akita-pu.ac.jp/kenkyuseika/kenkyuseika2023/8173

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公開日: 2024-12-25  

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