前年度に引き続き,NMU欠損ラットと同腹仔の野生型を用いて解析を行なった。これまでの研究で,NMU欠損ラットが肥満や摂食異常を示さなかったことから,ラットの脳におけるニューロメジンU(Nmu)およびNMU受容体2型(Nmur2)mRNA発現が,摂食制御に関する神経核で見られるかどうかを確認した。マウスの視床下部では,Nmuは背内側核(DMH),腹内側核(VMH),弓状核(ARC)で発現し,NMU受容体2型(Nmur2)は室傍核(PVN),DMH,VMH,ARCで発現することが報告されている。これら神経核は,摂食やエネルギー代謝の制御に関与する脳領域である。そこでin situハイブリダイゼーション(ISH)とRT-qPCRで,ラットの視床下部におけるNmuとNmur2のmRNA発現と局在を解析した。NmuのISHでは,DMH,VMH,ARCなどでは陽性シグナルが観察できず,その一方で,PTでNmu mRNAの強い陽性シグナルが観察された。レーザーマイクロダイセクション(LMD)で採取した各脳領域のサンプルを使用してRT-qPCRで解析したところ,Nmu発現はPTにおいて高レベルで検出されたが,DMH,VMH,ARC,PVNでは検出限界に近かった。次に,Nmur2の発現をISHで調べると,ラットの視床下部の第三脳室の上衣層(EC)でのみ,陽性シグナルが観察された。LMDサンプルを用いたRT-qPCR分析では,ECでのNmur2の高発現が検出されたが,PVN,ARC,DMH,VMHでは,低発現もしくは検出限界以下であった。これらの結果より,マウスとは異なり,ラットでは視床下部の摂食制御に関わる脳領域において,NmuとNmur2の発現は極めて低いことが示された。
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