研究課題/領域番号 |
20K15839
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
河野 大輝 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (60846773)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | セイヨウミツバチ / キノコ体 / ケニヨン細胞 / ノックイン |
研究実績の概要 |
モデル社会性動物であるセイヨウミツバチでは、社会性行動と、昆虫脳の高次中枢であるキノコ体の関連が着目されている。キノコ体を構成するケニヨン細胞には遺伝子発現プロファイルが異なるサブタイプが存在し、各サブタイプが異なる行動制御に関わる可能性が指摘されている。本研究では、ミツバチにおける細胞種特異的な遺伝子制御法を確立することで、ケニヨン細胞サブタイプ選択的な遺伝子操作法の実現を目指す。 初年度では、ゲノム編集法を用いたノックイン手法の確立を試みた。ミツバチでは、CRISPR/Cas9によるノックアウト効率が非常に高く、インジェクション個体(F0世代)の全細胞がノックアウトされている例も報告されている。そこで、F0世代におけるノックイン効率も高いことを期待して、Cas9タンパク質とガイドRNA、ドナーDNAを産卵2時間以内の受精卵にインジェクションし、孵化した個体においてノックインが生じているか調べた。孵化個体からゲノムDNAを抽出しPCRを行った結果、ノックインが生じた場合に増幅されるバンドが検出された。このバンドは、Cas9タンパク質をインジェクションしなかったコントロール群では検出されなかったことから、ゲノム編集によるノックインが生じていることが示唆された。そこで、孵化した個体を働き蜂成虫まで人工飼育し、羽化個体からタンパク質を抽出してウェスタンブロットを行ったが、ノックインにより期待される外来タンパク質の発現は検出されず、F0世代のノックイン率は期待していたよりも低い可能性が示唆された。現在、インジェクション条件の検討によりノックイン効率が改善するか検討すると共に、インジェクション個体を女王蜂に分化させて産卵させ、F1世代においてノックインを検出する実験系も構築中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は新型コロナウイルス感染症の蔓延により、ミツバチの活動が最も活発な春に実験を行うことができず、またそれ以降も活動制限が課され、インジェクションの条件検討を十分に行えなかった。また、F0世代でのノックイン率が期待よりも低く、ゲノムDNAへの挿入が示唆される結果は得られているモノの、未だノックインタンパク質の検出に到っていない。
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今後の研究の推進方策 |
F0世代でのノックイン効率の改善と、F1世代でのノックイン検出の両方を並行して行い、ノックイン手法の確立を目指す。また、計画段階ではミツバチのケニヨン細胞サブタイプの網羅的遺伝子発現プロファイルの同定を、ノックイン手法と組み合わせることで行う予定であったが、支援を得られたシングルセルRNA-seq解析で代替する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症による研究の遅延と、支援が得られたシングルセルRNA-seq解析において確定している支援超過額を支出するため。ケニヨン細胞サブタイプの網羅的遺伝子発現プロファイルの同定は本来2021年度に実地予定であったが、今年度にscRNA-seq解析の支援が得られたことから、研究計画を変更して今年度から実施している。研究遅延により発生した未使用分の一部は、F1世代を低労力で作成するための飼育系構築に充てる予定である。
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