四季のある温帯に生息する多くの動物は、日の長さ(日長)の変化を読み取り、その季節に合わせた最適な生理機能や行動をとるよう進化してきた。この生物が日長の変化に応答する性質は光周性と呼ばれており、繁殖、成長、渡りなど様々な生命現象で観察される。近年の研究から季節によって変化する繁殖の分子機構の理解は進んできたものの、繁殖以外の生理機能や行動の季節変化の分子機構の詳細は明らかとなっていない。光周性の分子機構の理解をさらに深めるべく、これまで日長を変化させた際の脳の時系列試料を用いた網羅的な遺伝子発現解析を実施したところ、日長に対して明瞭に応答する機能未知遺伝子(以下、遺伝子X)を新たに発見することに成功した。また、興味深いことに遺伝子Xは脊椎動物で広く保存されているにも関わらず、いずれの動物においても機能が明らかとなっていなかった。そこで、まず遺伝子Xが発現している脳部位をin situ hybridization法により調べた。その結果、遺伝子Xは下垂体で発現していることが明らかとなった。遺伝子Xが発現している細胞の詳細に調べることを目的として、下垂体を用いたシングルセル解析を実施したところ、遺伝子Xはこれまでよく知られているホルモン産生細胞とは異なる細胞で発現していることが明らかとなった。次に、CRISPR/Cas9システムを用いて遺伝子Xのノックアウト(KO)メダカを作製した。遺伝子XのKOメダカを用いたRNA-seq解析を実施したところ、野生型とKO間で433個の遺伝子の発現に差があることが明らかとなった。現在、これらの遺伝子の情報をもとに表現型解析を実施中である。
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