研究課題/領域番号 |
20K15843
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
松村 律子 山口大学, 時間学研究所, 助教(特命) (20728216)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 概日時計 / 時計遺伝子 / PERIODタンパク質 / 相互作用 |
研究実績の概要 |
本年度は、PERIODタンパク質(PER)同士の二量体形成に必要なアミノ酸(領域)の同定と、二量体非形成の培養細胞株樹立および表現型の解析を行った。 これまでの報告に基づき、PER3を構成するアミノ酸の中から特定の場所の3つを候補とした(X、Y、Z)。これらを別のアミノ酸へ変異させたPER3タンパク質を、ベクターを用いて強制発現させ、共免疫沈降によりPER3とPER1およびPER2との相互作用を検証した。Yを変異させると、PER1との結合が弱まった。PER2との結合には、いずれのアミノ酸に変異を入れても、大きな影響は見られなかった。ここで、PER3とPER1の結合が、核内移行に関与しているかを検証するため、PER3とPER1を共発現させて細胞免疫染色実験を行った。時計タンパク質同士の相互作用と核内への移行は、概日時計の発振機能において重要なステップである。実験の結果、PER3の核内移行が促進されることが分かった。また、アミノ酸Yを変異させた場合は、PER1を発現させていないときと同程度であった。 これらの結果より、PER3の核内移行には、PER1との結合が関与し、その結合にはアミノ酸Yが重要であることが示唆された。 次に、アミノ酸Y変異細胞株における概日リズムの検証へと進んだ。CRISPR/Cas9システムを用いてゲノム編集を行い、PER3変異細胞株の樹立を試みた。その結果、想定通りの変異を持ったアリルと、ランダムな変異によるノックアウトのアリルを持つヘテロ変異細胞株を得ることができた。このヘテロ変異細胞株の細胞自律的な概日リズムを観察したところ、興味深いことに、ノックアウト細胞株と同程度に概日リズム周期が有意に短くなっていた。 本年度の研究により、PER3とPER1は相互作用し、概日時計において周期長の決定において役割を担っている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画では、本年度のうちに共免疫沈降などのin vitroの実験から得られた結果を基に、ゲノム編集細胞株の作成まで進む予定であった。想定通りの結果が得られ、細胞の作成にまで進むことができたため、おおむね順調と判断した。 生じた次年度使用額は、主に実験消耗品に繰り入れて使用する予定としている。
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今後の研究の推進方策 |
ノックアウトアリルとYアミノ酸変異アリルヘテロ変異株において、ノックアウトと同様の概日リズム周期長の短縮が観察された。このことから、アミノ酸一つの変異により、PER3とPER1の相互作用が失われ、概日周期長の調節能に影響が出たと推察することができる。一方で、片方のアリルのノックアウトによる影響の可能性もある。この可能性を否定するために、適切なコントロールとして、野生型とノックアウトのヘテロ変異株を作成し、概日リズムを比較する必要があると考えた。そこで、現在、野生型とノックアウトのヘテロ変異株を作成中であり、細胞株が樹立でき次第、細胞自律的な概日リズムを調べる。なお、両方のアリルに変異の入ったホモ型変異株は、数千のスクリーニングを行っても得ることができなかった。また、相互作用によるPER3およびPER1の核内移行と周期長との関係を明らかにすべく、各タンパク質の経時的な局在変化も調べる予定である。培養細胞株にて十分な検証を行い、ポジティブな結果を得られたならば、予定通りマウス個体での検証へと進む。
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次年度使用額が生じた理由 |
想定より実験がスムーズに進み、分子生物学的実験に必要な試薬などの消耗品の購入が少なく済んだため。また、コロナ禍により学会などへの旅行費を必要としなくなったため。
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