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2020 年度 実施状況報告書

松果体と眼の光受容シグナルの統合と並列処理

研究課題

研究課題/領域番号 20K15844
研究機関大阪市立大学

研究代表者

和田 清二  大阪市立大学, 大学院理学研究科, 特任助教 (90747320)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2022-03-31
キーワード松果体 / オプシン / ゼブラフィッシュ
研究実績の概要

2020年度は、全神経に蛍光カルシウムプローブであるGCaMP6sを発現させたトランスジェニックゼブラフィッシュ、Tg(HuC:GCaMP6s)を用いて、Whole brain imagingを実施した。特に、松果体をUVや可視光で光刺激し、脳内での光応答の記録を試みた。その結果、中脳の一部の領域で松果体光刺激に伴うものと考えられるカルシウムレベルの変化を記録した。特にUVと可視光に対する拮抗的な反応を見出し、それは松果体オプシンの分子特性を反映するものであった。次に松果体オプシン欠損変異体を用いて、同様の実験を行った。その結果、同領域でUVと可視光に対して拮抗的な光応答を示す細胞が著しく減少した。このことから、松果体オプシンの生み出すUVと可視光に対する拮抗性応答が中脳に伝わることが明らかとなった。また、同領域は網膜神経節細胞が間接的に投射する領域として知られているため、眼由来の光応答の寄与を精査するために、眼球切除個体や、遺伝学的に視覚の大部分を失った個体を用いてカルシウムレベルの変化を示す細胞の増減について調べたところ、特定のカルシウムレベル変化、具体的には光依存的カルシウムレベルの上昇、がそれらの個体でほとんど消失したことから、そのカルシウムレベル上昇が眼由来の光応答を反映していると思われる。以上のことから、中脳で眼由来の光情報と松果体由来の光情報が統合、あるいは並列的に処理されることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

Whole brain imagingを行う上で、当該年度前半に実験条件の最適化を行ったこともあり、滞りなくデータを取得することができた。また、眼球切除など外科的手術に関しても問題なく行えることがわかった。一方で、Whole brain imagingという大規模データ取得実験系であり、解析系がデータ量に対して追い付かない事象が生じた。現在は大部分が解消されているが、次年度以降も改善の余地ありと考えられる。以上のことから、「(2)おおむね順調に進展している。」と総合的に判断した。

今後の研究の推進方策

2021年度は、光に伴う行動の変化をゼブラフィッシュ稚魚を用いて解析する。特に、単純な光のオンとオフに伴う変化のみならず、光強度や波長組成の変動を与えた際に生じる行動に注目する。研究代表者は、いくつかの光依存的な行動を同定している。それらの行動が、眼、および松果体の光受容に起因するのかを眼球切除個体や松果体オプシン変異体を組み合わせ解析する。

次年度使用額が生じた理由

COVID-19の影響に伴う大学入構等の規制により、実験時間に限りが生じたこともあり、予想と異なり当該年度は支出が少なくなった。次年度では、実験時間を確保するとともに、解析系の強化のためのソフトウェアなどの購入の必要性も検討し、必要であれば導入したい。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Functional identification of an opsin kinase underlying inactivation of the pineal bistable opsin parapinopsin in zebrafish2021

    • 著者名/発表者名
      Shen Baoguo、Wada Seiji、Nishioka Haruka、Nagata Takashi、Kawano-Yamashita Emi、Koyanagi Mitsumasa、Terakita Akihisa
    • 雑誌名

      Zoological Letters

      巻: 7 ページ: 1

    • DOI

      10.1186/s40851-021-00171-1

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] The non-visual opsins expressed in deep brain neurons projecting to the retina in lampreys2020

    • 著者名/発表者名
      Kawano-Yamashita Emi、Koyanagi Mitsumasa、Wada Seiji、Saito Tomoka、Sugihara Tomohiro、Tamotsu Satoshi、Terakita Akihisa
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 10 ページ: 9669

    • DOI

      10.1038/s41598-020-66679-2

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] ゼブラフィッシュにおける松果体光情報の処理に関わる脳部位候補の解析2020

    • 著者名/発表者名
      和田清二、小柳光正、寺北明久
    • 学会等名
      日本動物学会 第91回大会 (オンライン)
  • [学会発表] ゼブラフィッシュにおける松果体光応答:「色検出」とその脳投射2020

    • 著者名/発表者名
      和田清二、沈宝國、山下(川野)絵美、永田崇、日比正彦、保智己、小柳光正、寺北明久
    • 学会等名
      S1「ゼブラフィッシュが切り開く新たな生物学」、日本動物学会 第91回大会 (オンライン)
    • 招待講演
  • [学会発表] ゼブラフィッシュ網膜におけるメラノプシンの視覚への関与に関する解析2020

    • 著者名/発表者名
      真野桃歌、和田清二、小柳光正、寺北明久
    • 学会等名
      日本動物学会 第91回大会 (オンライン)
  • [学会発表] Functional analysis of melaonpsin expressed in retinal horizontal cells of zebrafish2020

    • 著者名/発表者名
      真野桃歌、和田清二、小柳光正、寺北明久
    • 学会等名
      日本比較生理生化学会第42回山形大会
  • [図書] Optogenetic Potentials of Diverse Animal Opsins: Parapinopsin, Peropsin, LWS Bistable Opsin2020

    • 著者名/発表者名
      Koyanagi Mitsumasa、Saito Tomoka、Wada Seiji、Nagata Takashi、Kawano-Yamashita Emi、Terakita Akihisa
    • 総ページ数
      11
    • 出版者
      Springer Nature
    • ISBN
      978-981-15-8763-4

URL: 

公開日: 2021-12-27  

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