研究課題/領域番号 |
20K15847
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研究機関 | 国立研究開発法人国立国際医療研究センター |
研究代表者 |
宮原 麗子 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, ゲノム医科学プロジェクト 特任研究員 (40567301)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 結核感染症 / 全ゲノム解析 / 東南アジア / クラスター |
研究実績の概要 |
結核感染症は世界の3大感染症の一つであり、感染拡大予防の新たな対策が必要である。本研究の目的は、結核患者と結核菌のゲノム情報を用いて、集団発生に寄与する早期発病患者の宿主遺伝要因を明らかにすることである。結核菌の全ゲノム情報を用いたクラスター(集団発生)解析は、近年アウトブレイク調査に用いられており集団発生の特定や感染者の繋がりを明らかにすることができる。アウトブレイクや集団発生地域の特定は、ハイリスクな感染場所や接触者への重点的な介入への可能性を検討することにつながり、公衆衛生上有益な情報をもたらすものである。 今年度は、結核菌の全ゲノム解析によって特定されたクラスター群に含まれる患者にインタビュー調査を行い感染経路、感染場所、時期の特定を行いクラスター群の感染伝播の特性について解析を行なった。 2017年から現在までタイ国北部チェンライ県において病院やクリニックで結核と診断された成人を対象に、結核菌とヒトのDNA、疫学情報の収集を行い、結核菌とヒトDNAの全ゲノム解析を行なった。これまでに結核菌の全ゲノム解析が約800例実施され遺伝系統(Lineage)の解析が行われた。またゲノム解析情報を用いて感染伝播が疑われる症例のクラスターを特定した。収集した疫学情報はゲノム解析データと統合し、結核菌遺伝系統別の民族と居住地の分布の違いを地図上にプロットし空間疫学的解析を行った。これらの解析結果から、チェンライ県におけるLineageごとの結核症例の集積地域(hotspot)を特定することができ、また集積地域での結核患者の基本特性や臨床的特徴が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID-19の蔓延により研究代表者が研究地域を訪問することができず、研究開始に遅れが生じた。また、研究地域でも国内移動の自粛要請があり、遠方の調査地域へ現地調査員が訪問できず、検体収集やデータ収集に遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
検体収集に遅れが生じているが、検体収集期間を延長することで、目標人数に達するものと思われる。また、今回の研究テーマはタイ以外の地域と比較することで、地理的なリスク因子や地域ごとの感染伝播リスクの特徴を比較検討することができるため、今後はタイ以外の地域での検体収集やデータの解析を検討し、研究のインパクトを上げる工夫を行なっていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大によって研究地域への渡航が中止されたこと、また実施予定であった追加の調査が現地の国内移動自粛要請によって実施できなかったことから、本年度使用予定額を翌年度に繰越した。今年度、新型コロナウイルスの感染状況が改善していた場合は、現地での調査参加や会議参加のための旅費と、現地での検体収集費用に使用予定である。また、海外への渡航制限が継続されていた場合は、タイ以外の研究地域(アフリカ、フィリピン)に協力していただき、同様の解析を行うための調査費用に、旅費として計上した予算を使用することを検討する。
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