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2020 年度 実施状況報告書

ヒトの強靭な皮膚はどうやってできてきた?ヒトの皮膚を形成した塩基置換の同定

研究課題

研究課題/領域番号 20K15851
研究機関総合研究大学院大学

研究代表者

荒川 那海  総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 特別研究員 (90844754)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワードヒト特異的皮膚形質 / 遺伝子発現量 / プロモーターアッセイ / ゲノム編集
研究実績の概要

ヒトの皮膚は他の霊長類に比べ多くの形態的特徴があるが、それらがどのように進化してきたのか、その遺伝的基盤はあまり明らかになっていない。これまでの研究で私は、発現量解析によりヒト特異的皮膚形質に繋がる可能性のある4遺伝子の発現量増加をヒトの皮膚で検出した。さらにこれらのヒト特異的遺伝子発現を生み出すヒト系統での塩基置換を推定した。本研究課題では、それらの置換が実際にヒト特異的遺伝子発現を生み出しているのかを、ヒト皮膚培養細胞を用いたプロモーターアッセイとゲノム編集により解明することを目的としている。
プロモーターアッセイではまず、推定した候補塩基置換サイトを含む遺伝子発現調節領域のヒト配列をルシフェラーゼ遺伝子上流に挿入したベクターを作成した。Mutagenesisにより候補塩基置換サイトのみをヒト型から類人猿型の塩基に置換したベクターも作成した。これらのベクターをヒト皮膚培養細胞に導入し、ルシフェラーゼ遺伝子の発現量の比較を行ってきた。その結果を踏まえて、より信頼性のある測定値を得るために手法の改良を行った。
また、予備実験としてゲノム編集を行った細胞株を作成中であり、プロモーターアッセイで絞り込んだ候補置換について培養細胞での発現比較を行う準備を進めた。これにより、プロモーターアッセイで特定した塩基置換が、ゲノム中の他の遺伝子ではなくヒト特異的発現を示した遺伝子の発現を変化させるものであるかを検証することができる。ゲノム編集では書き換えるサイトの近隣の配列に二重鎖切断を導入するが、この反応の予備実験を行った。二重鎖の切断に必要なsingle guide RNA (sgRNA)の合成を行い、それを用いてin vitro下で標的部位に二重鎖切断を入れることに成功した。来年度は合成したsgRNAを実際にヒト皮膚培養細胞に導入し、ゲノム編集を行った細胞株を作成する計画である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

今年度はプロモーターアッセイに必要な各種ベクターの作成を行った。これらのベクターをヒト皮膚培養細胞に導入し実際にアッセイを行い、より信頼性のある測定値を得るために手法の改良を行ってきた。ルシフェラーゼによる化学発光を測定するプロモーターアッセイでは、安定した測定結果を得ることのできる実験系の構築が重要である。手法の改良を行ったことにより来年度から行うアッセイをより安定性のある測定にできると考えている。
また、予備実験としてゲノム編集を行った細胞株を作成中であり、プロモーターアッセイで絞り込んだ候補置換について培養細胞での発現比較を行う準備を進めた。これにより、プロモーターアッセイで特定した塩基置換が、ゲノム中の他の遺伝子ではなくヒト特異的発現を示した遺伝子の発現を変化させるものであるかを検証することができる。ゲノム編集用のsgRNAについては、in vitro下で標的配列部位に二重鎖切断を入れられることを確認した。来年度は合成したsgRNAを実際に皮膚培養細胞に導入し、ゲノム編集を行った細胞株を作成する計画である。
上記のように、皮膚でのヒト特異的遺伝子発現を生み出す塩基置換の特定に向けて実験を進めている。実験手法の改良や予備実験などを踏まえて安定した実験系の構築を行うことで、今後信頼性のある測定データを得ることができる。以上のことからおおむね順調に研究課題が進展していると言える。

今後の研究の推進方策

プロモーターアッセイについては、改良したアッセイ手法を用いて、ヒト皮膚培養細胞に導入したヒト型と類人猿型の塩基を持つベクター間のルシフェラーゼ遺伝子の発現量を比較していく。このアッセイで発現量差が検出できたならば、ベクターに挿入する配列を類人猿の同領域配列、候補塩基置換サイトのみをヒト型にしたアッセイも行い、その置換が発現量変化に関わっているのかを明らかにする。
また、予備実験として引き続きゲノム編集を行った細胞株の作成を行う。来年度は、すでに合成したsgRNAなどを実際にヒト皮膚培養細胞に導入し、核ゲノムの候補置換サイトのみをヒト型から類人猿型に書き換え、ゲノム編集の実験系を構築する計画である。実験系が構築できたら、実際にプロモーターアッセイで発現量差を示した候補置換サイトをヒト型から類人猿型に書き換えた細胞株を作成する。ヒト型と類人猿型の塩基を持つ細胞間で、ヒト特異的発現を示した遺伝子の発現を定量PCRによって比較する。これにより、プロモーターアッセイで特定した塩基置換が、ゲノム中の他の遺伝子ではなくヒト特異的発現を示した遺伝子の発現を変化させるものであるかを検証することができる。
プロモーターアッセイとゲノム編集での発現比較を行うことで、着目する遺伝子のヒト特異的発現を生み出す塩基置換を特定していく。これにより、ヒト特異的皮膚形質が進化の過程でどのような遺伝的基盤によって獲得されてきたのかを明らかにできると考えている。

次年度使用額が生じた理由

今年は新型コロナ感染防止のために国際学会などに参加ができず、旅費・参加費などの支払いがなく、次年度への繰越し金が多くなった。次年度はプロモーターアッセイ、ゲノム編集をたくさん行うため、繰越し金も含めて予算を多く支出する計画である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2020

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] スラウェシマカクにおける環境適応と偽遺伝子化2020

    • 著者名/発表者名
      荒川那海, Kanthi Arum Widayati, Laurentia Henrieta Permita Sari Purba, Xiaochan Yan, 今井啓雄, Bambang Suryobroto, 寺井洋平
    • 学会等名
      日本進化学会第22回オンライン大会

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公開日: 2021-12-27  

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