研究課題/領域番号 |
20K15861
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
村中 智明 鹿児島大学, 農学部, 特別研究員PD (50761938)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 光周性 / アオウキクサ属 / 概日リズム / フロリゲン / RNA-seq |
研究実績の概要 |
アオウキクサで見出した花成ホルモンFTのホモログについて、シロイヌナズナでの過剰発現により機能を解析した。過剰発現により花成が著しく促進し、フロリゲンとしての機能が確認された。本ホモログをLaFTh1と命名した。LaFTh1は消灯後11時間後に発現が誘導されるため、夜が11時間以上、つまり日長13時間以下で花成が誘導されると考えられる。昨年度に得たイボウキクサのRNA-seqデータの解析から、LaFTh1のホモログが同定された。発現パターンもアオウキクサと同様であり、短日条件においてのみ夜の後半に発現がみられた。イボウキクサでは長日植物であり、LaFTh1のホモログが発現する短日条件では花成がみられない。イボウキクサのLaFTh1ホモログにはフロリゲン活性がない可能性があり、シロイヌナズナの過剰発現による機能解析を計画している。一方で、イボウキクサが開花する長日条件においてのみ発現が見られる別のFTホモログも検出された。本研究で同定したイボウキクサ、アオウキクサのFTのホモログのタンパク配列情報に加えて、公開データベースに登録されているFT配列のデータを用いて、アミノ酸配列の系統解析を行った。その結果、イボウキクサにおいて長日条件で誘導されるFTホモログがシロイヌナズナのFT、イネのHd3aと同じクレードに入り、アオウキクサのLaFTh1はミナトカモジグサやトウモロコシで報告されているFTホモログと同じクレードに入った。ミナトカモジグサのFTホモログはLaFTh1と同じく、短日条件において夜の後半で誘導されることが報告されている。LaFTh1は単子葉植物で広く保存された、短日条件において夜の後半で誘導されるFTホモログである可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は長日植物と短日植物において日長応答が逆転するメカニズムを明らかとすることである。長日植物であるイボウキクサと、短日植物であるアオウキクサにおいて、花成に関与するFTホモログが異なることが示唆されたことは、日長応答の逆転を理解する上で重要であり、予想以上の成果が得られたと考えている。一方で、当初予定していた光周性を示さないイボウキクサ系統との掛け合わせによる原因変異の同定については、掛け合わせ手法の確立ができず、進んでいない。また、RNA-seqやゲノム解読についても実験条件の検討に手間取り年度内に実施することができなかった。これらを次の年度のはじめに実施し、遅れを取り戻す予定である。全体としては順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
アオウキクサにおいて光質により光周性応答が異なることが報告されているため、光質を変えてRNA-seqを実施する。また、LaFTh1の発現タイミングを変化させる分子機構を解明するために、限界日長が異なるアオウキクサ系統について、比較RNA-seqを実施する。 イボウキクサについては、ゲノム配列決定と光周性を示さない系統でのRNA-seqおよびリシーケンスを行う。また、掛け合わせによるQTL-seqを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
イボウキクサを対象にゲノムシーケンスとRNAseqを実施する予定であったが、実験系の立ち上げが遅れたため、シーケンスにかかる費用が未執行となった。また、オンライン学会が増えたために、旅費を執行しなかった。
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