昨年度までの解析で、短日植物であるアオウキクサのトランスクリプトーム解析から短日誘導性のFT遺伝子ホモログを見出し、LaFTh1とした。LaFTh1は夜明け前に発現が誘導され、発現時刻の多様性が限界日長の多様性と関連することが示唆された。長日植物であるイボウキクサのトランスクリプトーム解析からは長日誘導性のLgFTh1を見出した。またアオウキクサのLaFTh1のオーソログとみられる短日誘導性のLgFTh2を見出した。 最終年度には、ゲノム比較を行うための基盤を構築した。イボウキクサのゲノムは染色体レベルのアセンブリが公開されていたため、本研究で用いているG3系統および、それを純系化したp8L系統(長日性)とp7N系統(両日性)のリシーケンスを行った。また、アオウキクサに関しては鹿児島県で開花フェノロジーが異なる3系統についてリシーケンスを行った。アオウキクサのドラフトゲノムをイボウキクサの全ゲノム配列と比較することで、染色体にアンカーできた。これまでに同定したFTホモログに着目して比較ゲノム解析を進めている。 イボウキクサの長日性系統における長日条件での花成は高栄養状態(リン酸が3mM以上)でのみ誘導されたが、両日性系統の短日条件での花成は低栄養状態でも誘導された。このことから、長日誘導性のLgFTh1は栄養条件での制御を受け、短日誘導性のLgFTh2は栄養条件での制御を受けないことが明らかとなった。また、LgFTh2には長日系統と短日系統で変異が見られたため花成誘導能との関連を解析している。 これらの結果から、光周性逆転の分子機構についてFT遺伝子において長日誘導と短日誘導の2種類のホモログの使い分けと短日誘導性FTの変異から理解できる見通しがたった。
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