本年度は、新規核ゲノムの決定およびトランスクリプトーム解析を行った。核ゲノム決定について、ロングリードシーケンシングおよびショートリードシーケンシングで得られた配列データをもとに解析を行い、約33億塩基対の質の高いゲノムアセンブリを再構築することができた。トランスクリプトーム解析について、新型コロナウイルス感染症の影響で十分なサンプリングが実施できていなかったことから、本年度に新たなサンプリングを実施した。最終的な配列データセットを用いた解析を行った結果、オプシン遺伝子における配列の多様性が明らかになった。多様化の過程を明らかにするため系統樹の再構築を行った。系統樹の再構築は、相同な遺伝子における種間の違いをもとにした解析を試みた。しかし、相同な遺伝子を同定する解析の計算量が非常に多く解析に長い時間を要したため、一塩基多型に基づく解析を行った。その結果、核・ミトコンドリアの複数領域を用いた先行研究の系統樹と矛盾しない樹形の系統樹が得られた。この系統樹を用いた解析により、一部の系統は他の系統よりも遺伝的に多様化していることが示唆された。視覚の遺伝的・機能的な多様性についてさらに検証するため、新たな解析を実施した。具体的には、視覚に関わることが知られているオプシン以外の遺伝子の発現を検証した。その結果、一部の遺伝子について発現が確認され、視覚の多様性にはさまざまな遺伝子が関与していることが示唆された。
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