本課題では、植物個体間の相互作用を考慮したゲノムワイド関連解析(GWAS)の理論的性質を明らかにすることで、植物の多様性効果を最大化する遺伝子型の配置や混合比を予測することを目標とした。2年次の解析では、2つの対立遺伝子の間で、対称な負の頻度依存選択が働いている場合、その結果として正の多様性効果が生じることが判明した。最終年度も2年次の方向性を踏襲し、頻度依存選択の集団遺伝モデルをと個体間の相互作用を考慮したGWAS (Sato et al. 2021)を統合した。具体的には、2年次に考案した1遺伝子座の解析を拡張したGWASシミュレーションを行い、ゲノムワイドな遺伝的多型のデータに対しても新たに提案した回帰モデルが正と負の頻度依存選択を十分に区別できることを明らかにした。また、この回帰モデルは、形質の遺伝様式が完全優性あっても相加的であっても十分に有効であった。さらに、シロイヌナズナ野生系統の花茎数のGWASデータに適用したところ、花茎数と相関が強い多型には対称な負の頻度依存選択に関わるものが多く見られた。これらの結果は、2年次の成果と合わせて国際学会で口頭発表された。成果は2022年のうちにいち早くプレプリントとして公開され、課題期間内に国際学術誌に受理・掲載された。
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