研究課題/領域番号 |
20K15882
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
入谷 亮介 国立研究開発法人理化学研究所, 数理創造プログラム, 研究員 (10843980)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 繁殖生態学 / 数理生態学 |
研究実績の概要 |
地球上で多様性の卓越する被子植物の特徴として、次の3つが挙げられる。花を咲かせて花間で花粉のやりとりをする、という「他家受粉」、胚嚢由来の2つの細胞が2つの花粉由来細胞と融合する「重複受精」、そして三倍体の胚乳に見られる、母体からの資源獲得をめぐる「ゲノム刷り込み」である。これらの特徴はいずれも、植物個体群の集団遺伝的構造に大きく影響する。したがって、これら特徴を考慮することで必然的に生じる血縁選択圧を理解する必要がある。しかし、実証研究では、これらは困難であり、理論研究による予測が必須である。 被子植物の進化を集団遺伝的構造と関連させつつ明らかにする試みは、植物の繁殖生態学やその多様性を理解するという観点のみならず、動物においてもっぱら適用されてきた、「動物行動学」の枠組みを植物に適用することで、動植物の進化を幅広く網羅する学際性という観点からも重要な課題である。したがって、本研究では、この課題を解決することを試みる。 本研究では、数理モデルを用いた理論研究によって、開花植物の多様性・進化を理解することを試みる。本研究により、上記のような基礎的な知見のみならず、農業やSDGといった、実社会においても非常な重要な立ち位置を占める、農作物の生産効率についても、深い示唆が得られるかもしれない。たとえば、どのような条件で、一つの株で、花植物の子房が、均等に大きく育つことが期待されるか、といった疑問にも将来的には答えられるようになる可能性がある。したがって。こうした学際的・実務的・基礎的な観点を持ち合わせた本研究を世界に先駆けて実施・発信することには大きな意義があると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
数理モデルをすでに構築しており、花植物の様々な進化的なシナリオを具体的に考慮して、各シナリオごとに、新たな突然変異遺伝子が出現した場合の侵入解析を実施予定である。特に、近年、有用性を認識されつつある、open model approach(本来は、平衡状態に達していて「閉じた」パラメータについて、実証研究での実測値やそのばらつきを代入することで、従来のモデルから得られる予測の妥当性を検証する手法)を採用し、花植物の特殊な繁殖様式の進化を調べるというアイデアに至った。これは申請当初は思いついておらず、今後の発展が大いに期待される。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、各シナリオにおける数理モデルを構築する。そのために、相加効果アリルのディプロイド・モデルを構築・解析する。そのモデルを、花植物の様々な進化シナリオに適用し、予測を得る。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナの流行により、国外渡航が強く制限されてしまったため。ただし、今年度は規制が緩和される可能性が高いため、研究計画を遂行するための海外出張・学会発表を行なう予定である。
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