研究課題/領域番号 |
20K15884
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
水野 文月 東邦大学, 医学部, 助教 (50735496)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 旧石器時代人 / 早期縄文時代人 / 日本列島 / 古代ゲノム / 核ゲノム |
研究実績の概要 |
アフリカを出た現代型ホモ・サピエンスは4万~3万5千年頃前に日本列島に到達した。旧石器時代の遺跡は列島全体で数千ヶ所と推定されているにもかかわらず、旧石器時代人の姿はほとんど分かっていない。なぜなら、ごく少数の旧石器人骨しか発見されていないことが原因である。ヨーロッパと比較して高温多湿なアジアの気候や、酸性土壌に覆われた日本列島では古人骨の残りが悪く、かろうじて残った古人骨に含まれるDNAは断片化が進んでおり、DNA分析は困難を極める。しかし、日本列島人の系譜を辿るためには、旧石器時代人のゲノム情報、そして、その後に続く縄文時代人との遺伝的関係を明らかにすることは不可欠である。 本課題では、母系の遺伝情報であるミトコンドリアゲノムの全長配列決定に成功した旧石器時代人・港川1号人骨の核ゲノム配列を明らかにするために、次世代シーケンサによるシーケンスを大規模に実施した。その結果、北東ならびに東南アジアを含めた東アジアの後期更新世時代人骨の核ゲノム解析に関する報告と同等の核ゲノム情報を得ることに成功した。この全ゲノム情報から港川1号人骨は男性であることが示された。この結果は、人骨形態から得られている知見と合致するものであった。 旧石器時代人の位置づけを明らかにするためには、比較参照情報として縄文時代人ゲノム配列が不可欠である。縄文時代は1万年以上に及ぶが、これまでにゲノム配列が明らかにされている縄文時代人は縄文後期ならびに晩期の遺跡からの出土人骨である。そこで、縄文早期時代(8300年前)人骨のゲノム解明も並行して進め、核ゲノム情報を得ることにも成功している。 上記の旧石器時代ならびに縄文早期時代人骨の核ゲノム情報をもちいて、東アジアの同時代人骨の核ゲノム情報を含めた数理解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
得られる配列情報が膨大であるため、それを解析するスパコンの容量が心配ではあるが、旧石器時代人ならびに早期縄文時代人の核ゲノム情報取得(実験解析)は予定どおりに進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
研究初年度に実施した実験解析から得られた「旧石器時代ならびに縄文早期時代人骨の核ゲノム情報」をもちいて、今後は数理解析を進めていく。本研究で得られた旧石器時代ならびに縄文早期時代人骨の核ゲノム情報の量と質は、現代人ゲノムと比較しても問題ない。数理解析では、現代アジア人類集団に加え、アジアの同じ時代の古人骨の核ゲノム情報を含めて、主成分分析・ADMIXTURE解析・f3解析等をおこない、旧石器時代人とその後の縄文時代人との遺伝的関係を明らかにすることで、日本列島人の系譜を古人骨ゲノムから辿る計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ予定通りに進めることができたが、消耗品の一部を想定よりも安価に抑えることができたために残金が生じた。今年度も昨年度に引き続き、実験分析、データ取得、解析に取り組む計画である。
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