研究課題
中枢神経系の免疫担当細胞として知られているミクログリアは神経活動制御や神経回路再編など、実に多彩で重要な脳機能に深く関与していることが明らかになっているが、ミクログリアを操作する方法はまだ無い。これまで、ミクログリアの研究は主にマウスミクログリアを中心に行われてきた。一方で、ヒトミクログリアの研究も一部行われているが、これらは主にin vitro 実験系で展開されている。しかし、マウスミクログリアとヒトミクログリアはその分子発現及び機能に大きな差があること、ミクログリアの性質はin vivo とin vitro で予想以上に乖離があること等が問題となっている。そこで私達は正常ヒトミクログリア(iPSMG)を非侵襲的にマウス脳へ移植する移植法を開発した。先ずCSF1受容体拮抗薬ONでマウスミクログリアを除去後、同薬OFFでヒトiPS細胞由来ミクログリア(iPSMG)を非侵襲的に「経鼻移植」した。iPSMGは速やかに嗅球に侵入し、各脳部位に移動・増殖し、ほとんどがヒト型に置き替わった。iPSMGは微細な突起をもつラミファイド型で、少なくとも60日間はマウス脳内に生着した。この簡便、安定的、安全なミクログリア移植法開発により、ヒトミクログリアの性質解明が加速するとともに、薬物処理及び遺伝子改変ミクログリア移植に応用することで、新しい脳機能制御機構解明及び細胞治療法の開発が期待できる。
2: おおむね順調に進展している
申請者はこれまでに、in vivoでヒトミクログリア機能を解析するために、ヒトミクログリアを マウスの脳内に移植する「ミクログリアヒト化マウス」の創出研究を行ってきた。ヒトミクログリア移植には、人iPS細胞由来ミクログリアを用いて、完全非侵襲的な、経鼻移植法経鼻移植法により移植した。種々の条件の最適化により、持続的にヒトリコンビナント コロニー刺激因子1 (hCSF1)とヒトランスフォーミング増殖因子-β1 (hTGFβ1)を経鼻的に供 給する等、 ヒトミクログリアを移植後少なくとも二ヶ月間は安定的に海馬及び小脳に定着させる方法を確立し、マウス脳内ではあるがヒトマウスミクログリアの in vivo形態学的解析を行うことができた。
今年度はヒトミクログリア-神経細胞連関の解析し、(1)神経形態及び(2)神経生理に対するヒトミクログリアの役割について明らかにする。
昨年度は新型コロナウィルスの影響で予定していた抗体、試薬等の納品は遅れました。今年度は、抗体及び試薬等の購入に充てることを予定している。
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Glia
巻: 69 ページ: 2332;2348
10.1002/glia.23985