研究課題/領域番号 |
20K15900
|
研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
細島 頌子 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 研究員 (90847914)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 微生物ロドプシン / オプトジェネティクス / 光遺伝学 / 膜配向 |
研究実績の概要 |
本研究では微生物ロドプシンの膜配向を逆転させ、新たなオプトジェネティクスツールの創造を目指す。これまで微生物ロドプシンの膜配向はN末端が細胞外、C末端が細胞内に局在するとされてきた。しかしメタゲノム解析により発見された新たな微生物ロドプシンのグループであるヘリオロドプシンは、アミノ酸配列が既知の微生物ロドプシンとは大きく異なり、さらにこれまでに知られていた微生物ロドプシンとは膜配向が逆転し、N末端が細胞内、C末端が細胞外に局在していることが判明した。これによりヘリオロドプシンと従来型微生物ロドプシンのキメラタンパク質を作製し、微生物ロドプシンの膜配向を転換するという着想を得た。 2020年度は新たに発見されたヘリオロドプシンのグループに着目し、13種類のヘリオロドプシンについてwhole-cell patch clamp法や免疫染色法を用いて、その性質を解析した。さらに10種類以上の改変体を作製し、構造と機能の連関について、さらに詳細な解析を行った(論文準備中)。またいくつかのキメラタンパク質を作製し、その膜配向や輸送機能の検証を行った。 ヘリオロドプシンは古細菌や真正細菌の他、藻類などの真核生物や巨大ウイルスから500種類以上発見されているが、その中で分光学的なアプローチや結晶構造の決定などの研究が行われたヘリオロドプシンはわずか数種である。本研究により新たなグループのヘリオロドプシンの研究が進展し、その多様な性質の一端が明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新たなヘリオロドプシンの研究も進み、従来型の微生物ロドプシンとキメラタンパク質を作製する際の候補が研究当初の5倍以上に増えたこと、またそれぞれのヘリオロドプシンで異なった特徴を示しているなど、今後の研究を遂行するにあたり、キメラタンパク質の組み合わせの幅が広がったため。今後、より多くのキメラタンパク質を作製することができ、その中で最適な条件を選別できる可能性が高い。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの研究からナトリウムやカリウム等の透過性が高く、内向き整流性の強い一価陽イオン選択的な光受容チャネルであることが明らかになったナトリウム濃度が細胞外では高く、細胞内では低い、一般的な生理的環境下であれば、GtCCR4はナトリウムを細胞外から細胞内に輸送する。細胞内ではカリウム濃度が高いため、GtCCR4の配向を逆転させ、外向き整流性の一価陽イオンチャネルへと転換することで、カリウムを細胞内から細胞外へ輸送するカリウムチャネルとして機能することが期待される。今後、GtCCR4とヘリオロドプシンのキメラタンパク質の作製をさらに推進する。GtCCR4のN末端から膜貫通領域やループ部分を10から30アミノ酸ごとに、ヘリオロドプシンの相同部位に置き換えたキメラ光受容タンパク質を作製し、それらを哺乳類培養細胞に発現させ、そのN末端に付加したcMycタグ等を免疫染色法によって認識することで膜配向の検証を行う。膜配向の逆転が確認された場合はwhole cell patch clamp法を用いて、イオン輸送の整流性やイオン選択性、光感度等の電気生理学的性質を明らかにする。以上により外向きカリウムチャネルのデザインと検証を行う。得られた結果については、国際学会や論文等に取りまとめ、成果を発表する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの流行により、研究が停止した期間があり、さらに参加を予定していた学会が延期になるなど、使用計画との変更が起こったため。
|