分娩は胎盤,胎児を含む子宮の内分泌系と母体の脳神経系との協調的なネットワークによって制御されているが,周産期の母体の神経回路における変化の動態やその機能解析に踏み込んでいる研究はまだ少ないのが現状である.妊娠に伴う神経回路の再編は成熟した個体の脳内で生理的条件下に起きる構造上の変化としては最大規模のものと予想され,多領域が連携的に機能する脳の動態を理解する時空間的比較コネクトミクス研究の好例になるものと期待される. 2021年度は,オキシトシン細胞に注目し,妊娠や出産、授乳時の神経細胞の活性化パターンをファイバーフォトメトリーによって測定した.また,ビデオレコーディングによる行動の詳細な解析と重ね合わせることで,妊娠時や授乳時の神経活性と行動との関連性が明らかになってきた。最後にDREADDシステムによってターゲットとなる神経細胞の活性を変化させることにより,オキシトシン細胞活性の人為的なコントロールを行なった.
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