研究課題
小脳の発達には、生後に起こる顆粒細胞前駆細胞(GCP)の増殖が非常に重要なイベントであることが知られている。GCPの増殖はShh(ソニックヘッジ・ホッグ)シグナルの下流の転写因子群が制御している。この転写因子群は様々な翻訳後修飾を受けているが、この修飾がGCP増殖に与える影響は不明である。申請者は、アルギニンメチル化酵素・PRMT1の欠損が、GCP増殖異常を誘導し、マウス小脳形態を著しく乱すことを発見している。しかし、PRMT1のGCPにおけるメチル化基質やその機能制御は不明である。そこで本研究では、①GCP特異的PRMT1欠損マウスの解析、②GCP内メチル化基質同定・機能解析により、PRMT1が担う小脳発達制御の仕組みを解明することを目的とした。本年度は、GCP特異的PRMT1欠損マウスの作製に向けて予定していた遺伝子改変マウスを導入し、交配を開始した。また、GCPの増殖能を in vitro で評価できるようにするため、マウス小脳由来GCPの初代培養法と増殖能の評価方法を確立した。さらに、PRMT1の基質のメチル化部位を同定するため、質量分析サンプルの最適化をおこなった。
2: おおむね順調に進展している
新型コロナウイルスによるアメリカからの動物輸入遅延が影響したが、今年度中にAtoh1-Creマウスを導入し、GCP特異的PRMT1欠損マウス(CKOマウス)の作製に向けた交配を開始できた。また、小脳におけるPRMT1の基質特定を目指したPRMT1のメチル化部位の同定のため、質量分析サンプルの調製条件を改良することができた。また、成果の一部を論文発表することができた。
次年度は当初の計画通り、PRMT1がGCPの増殖を細胞自律的に制御している可能性について、GCP特異的PRMT1欠損マウス(CKOマウス)の作製及び表現型解析を進める。
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Biochimica et Biophysica Acta (BBA) - General Subjects
巻: 1865 ページ: 129776~129776
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Journal of Neurochemistry
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