研究課題/領域番号 |
20K15915
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
江川 遼 名古屋大学, 医学系研究科, 特任助教 (20722226)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | オリゴデンドロサイト不均一性 / 両耳間時差 / ニワトリ胚 / 髄鞘 |
研究実績の概要 |
オリゴデンドロサイトは脳領域ごとに異なる形態や遺伝子発現を示す。このオリゴデンドロサイトの不均一性がどのような機能的意義を持ち、どのように生み出されるのかについてはまだほとんど理解が進んでいない。脳幹聴覚回路では、領域ごとに異なる長さのミエリンを形成して軸索配線の伝導距離の差を相殺することで、左右の耳に入力する音情報を正確に統合している。それによってマイクロ秒レベルの時間差(両耳間時差)を検出し、音源定位に寄与する。本研究では、研究代表者が独自に確立した複数の実験技術を駆使して、両耳間時差の検出を支えるオリゴデンドロサイト形態の領域差を多角的に解析し、領域差を生み出すメカニズムを明らかにすることを目的とする。 初年度である令和2年度は、オリゴデンドロサイトの細胞密度に着目した研究を行った。対側投射領域と神経核近傍領域の間でオリゴデンドロサイトマーカー陽性細胞およびBrdU陽性の新生細胞の密度を比較したところ、神経核近傍領域では1.2-1.5倍密度が高かった。脳幹聴覚回路の大細胞核ニューロンの軸索は全長にわたってミエリン化されることから、オリゴデンドロサイト間のミエリン形成の競合がミエリン長の領域差に寄与していることが示唆された。さらにこの密度差は、大細胞核ニューロンの開口放出の抑制によってほぼ消失したことから、軸索終末から放出される伝達物質がオリゴデンドロサイト産生を促していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度は、当初の計画通り大細胞核ニューロンの活動操作の影響を検証した。その結果神経活動によってオリゴデンドロサイト産生が領域依存的に制御されていることを明らかにし、それによる細胞密度差がオリゴデンドロサイト形態の領域差を生み出す要因の一つであることを見出した。この点において、当初の計画どおりの進展を遂げていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は、令和2年度で得られた結果を補強し、オリゴデンドロサイト密度によってミエリン形成の領域差がどのように変化するのかをより詳細に調べる。具体的には、大細胞核ニューロンでの開口放出抑制により領域間のオリゴデンドロサイト密度を均一化した際の単一オリゴデンドロサイト形態について詳細に解析し、ミエリン数や個々のミエリン長を定量的に比較する。また、オリゴデンドロサイト産生を促す放出性の伝達物質の特定に着手すべく、オリゴデンドロサイト前駆細胞特異的な操作技術およびライブイメージング系の構築を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
少額であったため使い切らず、次年度初頭の試薬類の購入費として繰り越した
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