2022年度は、我々が独自に開発した、UBCsで組み換え酵素Creを発現するマウスに対して、GFPや神経活動を強制的に活性化するDREADDシステムを発現させるアデノ随伴ウィルスを導入し解析を行う予定であった。しかしながら、生後初期にはUBCsに限局しているCreの遺伝子発現が、発生・発達とともに、UBCs以外の細胞でも見られるようになることを見出し、本マウスを用いた成体におけるUBCsの機能解析は困難であることが判明した。そこで当初の予定を一部変更し、成体においてもUBCsでのみCreを発現するマウスの作成を行うこととした。前年度までに解析したscRNAseqデータを再度解析、発生時から発生が完了した成体マウスにおいても発現が見られるマーカー候補遺伝子を約50遺伝子同定した。それらの遺伝子に関して実際に遺伝子発現を調べ、UBCsに特異的であると考えられる遺伝子を2つまで絞り込んだ。これらの分子は、これまで全く知られていなかった新規マーカーとなり、今後のUBCs研究において、強力なツールとなる可能性がある。本年度は、以上の解析とは別に発達期のUBCsだけを抽出した単一細胞RNAシーケンシングを行なった。本解析によって、これまでに明らかにされてこなかった発達期のUBCsの遺伝子発現プロファイルが明らかになることが期待される。また、本研究で用いた単一細胞RNAシーケンシング解析を応用した共同研究の成果を2報発表した。 総じて、研究期間全体を通じて、これまでに実態がほとんどわかっていなかったUBCsの詳細な遺伝子発現プロファイルを実施し、UBCsの発生や機能に関わる分子の多くを明らかにすることができた。本研究の成果は今後論文として報告する予定である。
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