研究課題/領域番号 |
20K15924
|
研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
堤 新一郎 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, 副チームリーダー (20862676)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 小脳 / 自閉症 / 二光子イメージング / 感覚運動連関 / 運動タイミング |
研究実績の概要 |
1. 疾患モデルマウスの感覚運動連関の異常の定量化 自閉症スペクトラム障害モデルマウス(patDp/+)において、小脳外側部の機能と考えられている感覚処理とそれに基づく正確なタイミングでの運動制御を定量可能な多感覚運動連関タスク(Tsutsumi et al., Cell Rep (2020))を行わせた。patDp/+マウスでは正常マウスに比して、多感覚刺激に対してリック運動を行う感覚運動連関の学習が遅れた一方、その後の単感覚刺激に対しての反応抑制の学習には違いがなかった。また、多感覚刺激に対するリック運動開始のタイミングは正常マウスに比べて遅いことが観察された。 2. 疾患モデルマウスの小脳神経回路活動異常の定量化 多感覚運動連関タスク中のpatDp/+マウス小脳外側部Crus Iの広い領域でのプルキンエ細胞の二光子カルシウムイメージングを実施し、プルキンエ細胞への登上線維入力の集団活動を記録した。patDp/+マウス小脳外側部Crus Iでは、登上線維入力の同期で定義される縞状構造が一部崩れ、極端に細いバンドが見られた。さらに、タスク下での登上線維入力は正常マウスに比べて少ないか、あったとしても遅く、時間的なバラつきが大きかった。 3. 今後の計画 今後は異なる自閉症スペクトラム障害モデルマウス系統(CHD8 hKO)において、感覚運動連関の障害に加え、作業記憶の障害に注目して解析を進めていく。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、自閉症スペクトラム障害モデルマウス(patDp/+)において多感覚運動連関タスクを行わせ、行動障害を定量した。また、多感覚運動連関タスク中のpatDp/+マウス小脳外側部Crus Iの広い領域でのプルキンエ細胞の二光子カルシウムイメージングを行うことに成功し、登上線維入力の同期性の乱れやタスク関連活動の低下、およびタイミングの遅れやバラつきが観察された。今後は異なるマウス系統や異なるタスクを併用し、さらに解析を進めていく。
|
今後の研究の推進方策 |
研究室の移動後は、精神疾患において障害される作業記憶を定量できるタスク(遅延付きgo/no-goタスク)を立ち上げており、これを異なる自閉症スペクトラム障害モデルマウス系統(CHD8 hKO)に適応して多角的に行動障害と、それに関連する小脳回路機能の障害を定量・操作していく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究室移動と新型コロナウイルスの影響により、2020年度の実験開始が遅れた。それにより2021年度でより多くの実験を行う予定となったため。
|