研究実績の概要 |
海馬は動物の記憶、学習に重要な脳部位であり、これらの機能を支えるのは海馬を構成する神経細胞の活動である。海馬では、これらの個々の神経細胞の活動が集合となり、脳波(以降「局所場電位」)を生み出す。局所場電位は、ヒト、サル、コウモリ、ラット、マウスなどで観察され、様々な脳機能と関連することが知られている(Adey, Prog. Physiol. Psychol., 1966)。特に海馬で観察される局所場電位のうち、周波数が3~12 Hzのシータ波は、記憶の獲得に重要とされている。 局所場電位に反映される神経活動は、個々の神経細胞の発火(活動電位)および発火閾値に達しない膜電位である。それにもかかわらず、局所場電位については、発火との関連性を調べた研究が大多数であり、膜電位との関連を調べた研究はこれまでほとんど無かった。 2020年度は、記録手技の改善を重ね、海馬の亜領域(CA1野、CA2野、CA3野、海馬支脚など)ごとに神経細胞から膜電位の記録をおこない、膜電位のデータの取得を重ねてきた。これらのデータの詳細な解析は2021年度におこなう予定であり、膜電位自身の自己相関などに注目する。 また、個々の神経細胞の膜電位の記録と、特定の脳領域内の局所場電位の記録、および複数細胞からの発火の記録を同時におこなう実験系の準備を進めている。これらは現状、機器の接続の段階ではあるが、2021年度にはすべて完了し、データを取得できる予定である。
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