研究実績の概要 |
海馬は動物の記憶、学習に重要な脳部位である。この機能は海馬を構成する神経細胞の活動によって担われており、活動電位によって神経細胞間の情報伝達がおこなわれている。さらに、このような個々の神経細胞の活動が集合となり、局所場電位(局所的な集合電位であり脳波とみなして差し支えない)を生み出している。局所場電位は、広く哺乳類(ヒトやサル、ラット、マウス、コウモリなど)で観察され、様々な脳機能と関連する(Adey, Prog. Physiol. Psychol., 1966)。特に海馬で観察される局所場電位のうち、周波数が3~12 Hzのシータ波は、記憶の獲得や運動に関連するとされ、その記録にはこれまで主に細胞外記録法が用いられてきた。 局所場電位に反映される神経活動は、個々の神経細胞の活動電位(発火)および閾値下膜電位である。これまで、局所場電位については、発火との関連性を調べた研究は多く存在し、場所細胞のシータ位相前進や、海馬リップルにおける場所細胞の再生など、空間表象に関する重要な性質が明らかになってきた。その一方で、膜電位との関連を調べた研究はこれまでほとんど無かった。膜電位は細胞内記録法により記録できる。 2021年度は、麻酔下のマウスから、局所場電位と閾値下膜電位の同時記録をおこない、膜電位の自己相関や局所場電位との相互相関を調べた。また、局所場電位に対する発火タイミングの解析や、局所場電位と膜電位の位相のずれや相関などを調べた。
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