研究課題/領域番号 |
20K15929
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
上田 修平 名古屋大学, 環境医学研究所, 助教 (10769037)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 扁桃体中心核 / 摂食行動 |
研究実績の概要 |
近年増加傾向にある精神疾患としての摂食障害は、根本的な原因や発症機構についていまだに不明な点が多い。摂食障害の病態の解明には、情動的摂食行動の神経回路機構の解読が必要であると考え、情動中枢の出力核である扁桃体中心核において摂食行動に関連する情報がどのような回路機構で処理され、摂食行動調節のアウトプットにつながるかを解明することを目的とし、今年度は神経活動計測を主に進めた。 具体的には、扁桃体中心核を構成するの主要な神経細胞であるPKCd (protein kinase C, delta)、SOM (somatostatin)、CRF (cortictropin releasing factor)陽性細胞を対象とし、それぞれのCreドライバーマウスの扁桃体中心核にCre依存的にカルシウムインディケーターGCaMP6を発現するアデノ随伴ウイルスを導入し、エンドスコープ型小型蛍光顕微鏡を用いて摂食行動時、または様々な味質水の飲水行動時のカルシウムイメージングを行った。取得した神経活動計測データの解析を進め、扁桃体中心核において摂食によって神経活動変化を起こす細胞群、特定の味質に応答して神経系活動変化を起こす細胞群が存在することを確認した。現在は神経活動計測の解析結果を元に、摂食行動に促進的に働く可能性のある神経細胞群に対象を絞り込み、化学遺伝学的手法や光遺伝学的手法を用いた回路操作実験を行う準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
エンドスコープ型小型蛍光顕微鏡を用いた神経活動計測については、順調にデータ取得を進めることができ、摂食行動に促進的に働く可能性のある細胞群を特定することができた。一方で、データの複雑性から解析に想定以上の時間を要したため、神経回路操作実験への着手が予定より遅れてしまった。
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今後の研究の推進方策 |
神経活動計測については、2020年度に必要最低限の個体数のデータ収集を行うことができたため、2021年度は、摂食行動に促進的に働く可能性のある細胞群の神経回路操作を重点的に進める。具体的には以下2項目の研究を進める予定である。 (1) 特定のCreドライバーマウスにアデノ随伴ウイルスを用いてDREADD受容体を発現させ、慢性的な化学遺伝学的操作を行い、摂餌量、行動量、体重変化の検討を行う。 (2) (1)と同様にDREADD受容体またはオプシンを発現するマウスを準備し、急性の化学遺伝学的操作や光遺伝学的操作を行った際の摂食行動の変化について検討する。 以上の研究から、扁桃体中心核の摂食行動への関与の因果関係を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度から実施予定であった神経回路操作実験への着手が、当初の予定より遅れてしまったため、それに必要となる物品費分の差額が生じた。当該実験は2021年度に行うため、2021年度分の使用額として計画している。
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