バルーン閉塞試験に対する数値流体力学解析は複雑であるため、前段階として、23 例 30 側のもやもや病に対する血行再建術後症例において、CTA 画像におけ るドナー血管の数値流体力学解析結果と、CT perfusion で評価した術前後の血流変化との相関を検討した。ドナー血管の予測流量と術前後の血流変化との相関を認めた。もやもや病に対する血行再建術後の血流変化に関しては、これまでレシピエント側の状態にしか注目されていなかった。本報告の結果は、 レシピエ ント側のみならず、ドナー側の解剖学的情報の術後血流変化への影響を示唆するものである。 また、仮想血管閉塞モデルを用いた非侵襲的側副血行路の評価法を開発すべく、21 例のバルーン閉塞試験施行症例において、CTA 画像を元に数値流体力学解析を施行し、バルーン閉塞試験の結果と数値流体力学解析の結果と の相関を検討した。CTA 画像を元に施行した数値流体力学解析における閉塞側中大脳動脈の予測流量及び壁せん断応力と、バルーン閉塞試験中に施行した血管撮影所見、スタンププレッシャー、CT perfusion の各種パラメーターとの相関を認めた。本結果は、 数値流体力学解析によりバルーン閉塞試験を施行することなく、非侵襲的に側副血行路の評価が可能であることを示唆するものである。また、当該年度は、これらの結果を実際の臨床と照らし合わせる目的で、急性期脳主幹動脈閉塞の治療成績に関して検討した。機械的血栓回収療法の治療成績を後方循環と前方循環閉塞症で比較した全353例の検討においては、同様の予後良好、 再開通率が得られることが示唆された。全322例を対象とした機械的血栓回収療法における動脈硬化性病変のリスク因子の検討では、併存疾患及び頭部MRAにおける他血管の狭窄性変化が予測に重要であることが示唆された。
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