研究課題
左右前肢運動の制御に関して、先行研究にて運動野から筋肉へとコマンド信号が送られることで左右の手の動きが緻密に制御されていることを解明してきたが、本研究では、内発的動機づけにより左右どちらの手を動かすのかを決定する神経メカニズムの解明に取り組んだ。左右前肢の運動発現のタイミング、および動機づけイベント(報酬獲得)のタイミングを正確に観測するために、頭部固定したラットに左右の前肢で独立に2つのペダルを操作することを学習させ、脳の多領域から光遺伝学を組み合わせた多細胞同時発火記録を行った。行動課題には報酬をもたらすペダルを教示する外部刺激が無いため、動物は自身でどちらのペダルを操作するかを過去の報酬獲得の経験に基づいて判断しなければならない。このような「どちらの手を動かすのか」という内発的な情報を海馬・嗅内野の細胞が学習の進行に伴って表現することを明らかにした。具体的には、運動野の細胞が学習初期から「手を動かす」という機能的活動を示した一方で、海馬・嗅内野の細胞は、学習の進行に伴って運動発現、報酬獲得、その両方を表現するようになることを明らかにした。このように運動を計画し、発現するための情報処理が異なる領野間で実行されることを示したが、今後は、このような情報が神経細胞種・神経回路特異的にどのように処理されているかを解明する予定である。この成果は、私たちが過去の経験に基づき未来の選択を判断する脳の仕組みの理解を一歩進めるものである。
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bioRxiv
巻: - ページ: -
10.1101/2022.03.31.485431
Neurobiology of Learning and Memory
巻: 183 ページ: 107484~107484
10.1016/j.nlm.2021.107484