研究実績の概要 |
申請者らは幼若期隔離マウスの前頭前野-視床回路についての研究を進めたが、視床室傍核(periventricular nucleus of thalamus, PVT)に投射する前頭前野V/VI 層錐体細胞への細胞興奮性が著明に障害されていることを明らかにした(Yamamuro et al.Nat Neurosci. 2020)。PVT には知覚処理、社会性を司るオキシトシン受容体(OTR)を発現する神経細胞群が存在しているため(Smith et al, 2017; Ryan et al, 2017)、幼若期隔離マウスの知覚処理障害、社会性障害はmPFC-PVT 回路異常によるPVT 内のOTR発現神経細胞群の機能障害により説明できる可能性を考えた。 オキシトシン受容体(Oxtr)-creマウスを用いてCre依存性にinhibitory DREADDを注入し、PVTのoxtr+細胞に限局し抑制を行い行動観察を行った。3chamberタスクにて有意に社会性行動が減少したが、活動量や不安には影響を認めなかった。また、コントロールとしてiDREADDの代わりにmCherryを注入し同様に実験を行ったが、これらのタスクにて違いは認めなかった。また、我々が開発したAR-LABO(複数マウス同時解析)を行い、PVTでのOxtr+細胞を抑制したマウスにおいて3chamberタスクと同様に有意に社会性行動が低下することが分かった。 次に、Oxte-creマウスのPVTにchanelrodophshneを注入し、その直上にファイバーを挿入し、PVTのOxtr+細胞に限局し活性化を行い行動観察を行った。3chamberタスクにおていも有意な違いがなく、また活動量や不安にも差がなかった。これらの結果から、PVTのOxtr+細胞は社会性行動に関わることが示唆された。
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