研究実績の概要 |
可視光を利用した光反応について2つの研究に取り組んだ。 可視光照射によるアルキニル化反応の開発を行った。可視光、触媒量のベンゾフェノン、超原子価ヨウ素を用いることで、エーテルおよびアミドのC-H結合を直接アルキニル化できることを見出した。本研究成果は、以下の学術雑誌に掲載された。 “Visible-Light-Induced Direct S0→Tn Transition of Benzophenone Promotes C(sp3)-H Alkynylation of Ethers and Amides”, Matsumoto, K.; Nakajima, M.*; Nemoto, T.* J. Org. Chem. 2020, 85, 11802-11811.
続いて、可視光を吸収可能な配位子を合成することで、金属を可視光により効率的に活性化し新しい反応の開発に取り組んだ。まず、TD-DFT計算によりどのような配位子が可視光の吸収が可能か計算を行った。様々なリガンド分子、およびそのパラジウム錯体について最低励起一重項状態に至る吸収波長を予測したところ、可視光吸収が可能なリガンドのデザインに成功した。遷移金属錯体が可視光を十分に吸収可能であることが示唆されたため、続いて、リガンド分子の合成検討を行った。その結果、目的物の合成に成功した。実際にパラジウム錯体とし、吸収スペクトルを測定したところ、可視光領域に吸収帯を有しており、計算による予測との整合性を確認した。続いて、可視光を用いる遷移金属触媒反応に取り組んだ。現在までにいくつかの反応において、熱では困難、または高温が必須な反応を、可視光照射化室温にて進行させることに成功している。
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