多くの官能基が存在しても特定の箇所だけを狙って変換できる化学選択的手法の実現は、有用化合物の合成工程数の短縮・誘導体合成の効率化の観点から極めて重要である。筆者はこれまでにα-ケト酸を用いた化学選択的脱炭酸縮合反応を種々報告してきたが、今回単体硫黄を光触媒条件下反応させることで医薬化学上重要な構造であるチオエステルを簡便に構築できることを新たに見出した。また、それらの反応の原料となるα-ケト酸の不斉合成法についても確立した。さらに、N-クロロペプチドを経由するペプチド化学修飾法も新たに提案し、非タンパク質構成アミノ酸の一種であるデヒドロアミノ酸の合成に応用できることを示した。
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