Verticillin類の合成に向けて、トリプトファン誘導体の酸化的環化二量化反応の基質合成の検討を行った。しかしながら、目的とするトリプトファン誘導体のカルボニルβ位のヒドロキシ基の導入において、その立体選択性に課題を残す結果となった。一方で、同検討の過程においてトリプトファン誘導体から酸化的環化反応によるテトラヒドロピロロインドール骨格の構築と、続くC3a位へのアセトキシ基の導入が一挙に進行することを見出した。そこで、本手法をジケトピペラジンを有するピロロインドール系天然物protubonine Bの合成に展開する事で効率的不斉合成を達成した。これまでに、単工程でC3aアセトキシテトラヒドロピロロインドールを合成する手法は数例報告があったが、収率が低から中程度であることや、電子不足なインドールを基質とした報告例がない点において課題が残っていた。一方で、我々の合成手法では電子不足なインドールを有するトリプトファンおよびトリプタミン誘導体を基質とした際にも、高収率かつ単工程で目的とする骨格を構築できる点において有用性がある。さらに、本酸化的環化反応に着想を得ることで、新たな酸化的ピロロインドールの二量化反応のへ展開し、トリプタミンおよびトリプトファン誘導からピロロインドール骨格構築と二量化を一挙に達成することに成功した。これらの知見は、verticillin AおよびBの合成だけでなくその類縁体の合成への展開も期待できる点において注目に値する。
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