昨年度に引き続き、マレイミドを収束的に連結する手法を鍵反応として抗がん活性を示す天然物 オキサレイミド I を標的とした全合成研究を行なった。 (R)-(-)-3-ヒドロキシイソ酪酸メチルから分子内 Diels-Alder 反応を経て合成した環化体をアセタール保護した後、Krapcho 脱炭酸反応によるメトキシカルボニル基の除去を行った。この際、2種のジアスレテオマー混合物が生成したが、両者はカラムクロマトグラフィーによる分離が可能であった。このうち、主生成物を用いてその後の検討を行った。最終工程での脱保護反応の容易性を考慮し、アリルアルコール溶媒中、ジブチルすずオキシドを用いたエステル交換反応によりメチルエステルをアリルエステルへと変換した。アリルエステル体のアセタール基を除去し、デカリンセグメントへと導いた。得られたデカリンセグメントに対し、ヨウ化サマリウムを用いたマレイミドセグメントとのカップリング反応を行ったところ、良好な収率で目的のカップリング体を得ることができた。次いで、Dess-Martin 酸化により生じた2級水酸基をケトンへと変換した。オキサレイミド I のマレイミド窒素の脱保護反応ではアシルマレイミド構造に起因して分解反応が進行しやすく、困難であったが、予備検討の結果を踏まえ低収率ながら脱保護体を得ることができた。最後にアリルエステル基を除去し、全ての保護基を脱保護することができた。現在、最終生成物の詳細な構造解析を行なっている。
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