まず、様々な置換基を有する20種類の架橋キサンテン系色素の合成について検討した結果、次の①~③の知見が得られた;①キサンテン環部位の電子密度が高いほど架橋反応が効率よく進行する;②キサンテン環の架橋部位に隣接する炭素(2位および7位)に置換基が存在する場合、架橋反応によって水酸基に置き換わる;③キサンテン環の適切な位置に水酸基やアミノ基が存在すると、本来架橋反応が進行しないローダミンやロドールなどのキサンテン系色素でも架橋反応が進行する。 合成した架橋キサンテン系色素の光物性の解析を行った結果、いずれの色素もLUMOエネルギーの選択的な安定化によって、近赤外領域まで長波長化した光吸収や発光特性を示した。特に、市販の可視光レドックス触媒であるエオシンYから合成した架橋エオシンY(BEY)は近赤外領域で約16%の蛍光量子収率を示し、架橋キサンテン系色素が蛍光色素としてもポテンシャルを有していることを明らかにした。架橋キサンテン系色素はサイクリックボルタンメトリー測定において安定な酸化還元波を示し、酸化還元刺激に対して耐性を有していることが示唆された。 続いて、芳香族ジアゾニウム塩の光アリール化反応の触媒としてBEYを適応した。種々のジアゾニウム塩とフランなどのヘテロアリールとのカップリング反応において、BEYはエオシンYと同程度の触媒活性を示した。特筆すべき点として、BEYに830nmの光を照射しても光アリール化反応が高効率で進行することがわかった。これは、550nm程度の光までしか光レドックス反応に利用できないエオシンYと比較して優れた点であると考えられる。また、BEYを光触媒とした光アリール化反応に、近赤外LED光源を利用することで、懸濁溶液中における光反応や、可視域に吸収を有する蛍光色素の直接アリール化も可能になることがわかった。
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