研究課題/領域番号 |
20K15965
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研究機関 | 明治薬科大学 |
研究代表者 |
大類 彩 明治薬科大学, 薬学部, 助教 (90845116)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | オレキシン / オレキシン1受容体 / モルヒナン / YNT-707 / 創薬化学 / 拮抗薬 / スピロ化合物 |
研究実績の概要 |
本研究は、オレキシン1受容体(OX1R)選択的拮抗作用を有するモルヒナン化合物において、モルヒナン骨格の部分骨格を大胆に除去した化合物を網羅的に合成するという戦略で、OX1Rとの結合に必要な必須構造の解明を目的としている。さらに、得られた情報を基に構造を最適化することで、OX1Rのより詳細な機能解明、並びに将来的には開発候補化合物を見出すことが期待される。 研究代表者は、これまでにモルヒナン化合物とオレキシン受容体との構造活性相関を行ってきた。本研究では、モルヒナン骨格を有するOX1R選択的拮抗薬YNT-707の構造を基に、これまでに得られた知見からN-17位のベンゼンスルホニル基およびC-6位のアミド側鎖を固定し、A環のベンゼン環が活性発現に及ぼす影響について検討を行った。 まず、A環を持たないデカヒドロイソキノリン誘導体を種々合成し活性の評価を行ったが、いずれも拮抗活性は見られなかった。また、6位アミド側鎖の配向が活性に重要であることを考慮し、C環の下方に6位側鎖を固定すべくスピロ環で縮環した化合物を合成し活性を評価したが、同様に拮抗活性は見られなかった。 次に、A環を有するスピロ(インダノ-ピペリジン)タイプの誘導体を合成したところ、弱いながらもOX1Rに対する拮抗活性(IC50 = 1.66 μM)を有する新規オレキシンリガンドを見出すことに成功した。 以上のように、A環を持たないデカヒドロイソキノリン誘導体において活性が見られず、A環を有するスピロタイプの誘導体において拮抗活性が見られた点から、A環部分にあたる脂溶性部位が拮抗活性発現に必要であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は新型コロナウイルス感染症に伴う緊急事態宣言により研究開始が遅れてしまったが、モルヒナン骨格のA環がオレキシン1受容体拮抗活性に及ぼす影響について検討すべく、デカヒドロイソキノリン誘導体とスピロ(インダノ-ピペリジン)誘導体の2種類の化合物タイプに焦点を当てて研究を行ったところ、ほぼ計画通り研究は進行している。 ①デカヒドロイソキノリン誘導体 A環を持たないデカヒドロイソキノリン誘導体については、C-8a位ヒドロキシ基の影響やC-6位アミド側鎖の立体配置および窒素置換基の影響について検討すべく、化合物を種々合成し、オレキシン受容体に対する拮抗活性を評価した。またC-6位アミド側鎖を下方に固定すべくスピロ環で縮環した化合物を合成し、同様に活性の評価を行った。いずれの化合物も拮抗活性は見られなかったが、A環の脂溶性部位が活性発現に重要であることが示唆される結果と考えている。 ②スピロ(インダノ-ピペリジン)誘導体 A環の脂溶性部位が拮抗活性発現に必要であることをふまえ、A環を有するスピロ(インダノ-ピペリジン)タイプの誘導体を設計した。4化合物のみではあるが合成および活性の評価を行ったところ、弱いながらもOX1Rに対する拮抗活性を有する化合物を見出した。特に6位側鎖がN-Meアミドの化合物よりもN-Hアミドの方が強い拮抗活性が見られる結果となった。 以上のように、モルヒナン骨格を有するOX1R選択的拮抗薬YNT-707の構造を基に骨格変換を行うことで新規オレキシンリガンドの創出に成功した。また、モルヒナン骨格を基に骨格を大胆に除去してもOX1Rに対する選択性は保持されていたことになる。これらの結果はHeterocycles(査読有)に投稿し、既にアクセプトされている。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度において、Spiro(indano-1,4’-piperidine)骨格を有する新規オレキシンリガンドの創出に成功した。これは、OX1R選択的拮抗薬であるYNT-707の骨格を大幅に変換し、よりシンプルな構造にしても拮抗活性自体は保持されたことを意味する。そこで令和3年度では、まず活性が見られた化合物を基に構造の最適化を行うことを計画している。また、当初の計画通り、3位置換基の影響についても検討を行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症蔓延による緊急事態宣言の発令により研究開始が遅れた点、また学会の多くが中止もしくはオンライン開催となり、当初の計画として挙げていた旅費が未使用となった点が挙げられる。また、オレキシンリガンドの合成に関して、特に大きなトラブルもなく遂行できたことも理由の1つである。 本年度は、拮抗活性は弱いものの新規オレキシンリガンドを見出すことに成功した。次年度はまず最適化に注力を注ぎたいと考えており、そのためには多くの化合物の合成と評価が必須である。したがって、試薬代や溶媒代、シリカゲル代等が嵩むことが見込まれるため、繰越金も含めてそれらの消耗品費に充てる予定である。
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